◎金正恩は開発中の兵器リストを開示したうえで、「核兵器開発を拡大する」と誓約した。
◎金正恩は演説の中で、「脅迫されない限り、最初に核兵器を使用することはない」と述べた。
2020年1月7日 ロイター通信/北朝鮮、金正恩

朝鮮中央通信によると、北朝鮮の金正恩は第8回朝鮮労働党大会4日目の演説の中で、「最大の敵はアメリカであり、大統領が誰であろうと平壌に対する政策が変わることはない」と述べたという。

朝鮮労働党員約7,000人の前で演説した金正恩は、開発中の兵器リストを開示したうえで、「核兵器開発を拡大する」と誓約した。

韓国のアナリストは、「金正恩の発言はジョー・バイデン米大統領に圧力をかけるものであり、1月20日(就任式)を意識している」と指摘した。

朝鮮中央通信は、「原子力潜水艦の計画もほぼ完了した。アメリカが我々と新たな関係を築く鍵は、敵対的政策を撤回するかどうかにかかっている」と報じた。

金正恩はトランプ大統領とは比較的良好な関係を構築していたが、2019年の米朝首脳会談後に破局し、非核化に向けた交渉は完全に行き詰まった。

一方、1月20日に就任するバイデン次期大統領は金正恩を「凶悪犯」と呼び、完全なる非核化に応じない限り、交渉に応じることはないと述べている。なお、金正恩は以前、バイデン氏を「狂犬病の犬」と呼んだと報じられている。

2018年6月12日 ロイター通信/シンガポール、セントーサ島のカペラホテル、首脳会談を終えたトランプ大統領と金正恩

金正恩は演説の中で、「脅迫されない限り、最初に核兵器を使用することはない」と述べた。

また、アメリカが経済制裁を解除するのであれば対話を受け入れると提案したうえで、「アメリカの敵意の高まりに対処するために、軍事力と核能力をさらに強化しなければならない」と強調した。

金正恩:
「我々が最も警戒すべき敵はアメリカである」

「大統領が誰に変わろうと、アメリカの基本的な性質と敵対的政策は決して変わらないだろう」

ワシントンD.C.のシンクタンク、ウッドロー・ウィルソンセンターのチョン・ソンチャン氏は、「金正恩はアメリカが実務レベルの交渉で非核化を約束するよう主張した場合、バイデン次期大統領との交渉には応じないと示唆した」と指摘した。

一方、米韓の定期的な軍事演習についての発言はなかったと伝えられている。金正恩は米韓合同訓練を「侵略リハーサル」と呼んでいるが、韓国はこの指摘を繰り返し否定している。

朝鮮中央通信によると、金正恩は開発中の弾頭ミサイル、水中発射型核ミサイル、固体燃料長距離ミサイル、偵察衛星などのリストを開示したという。

金正恩はアメリカ本土への攻撃を意識した大陸間弾道ミサイルの攻撃能力を向上させ、それに搭載する小型核弾頭の製造技術を開発する必要があると述べた。

金正恩:
「核開発を含む国防能力を絶えず強化し、米軍の脅威を抑圧した時、朝鮮半島の平和と繁栄を達成できる」

北朝鮮がそのようなシステムを開発できるかどうかは不明である。2018年、韓国政府は、北朝鮮が最大60発の核兵器を保有している可能性があると推定した。

韓国のアサン政策研究所のチェ・カン氏は、「北は新しい戦略核兵器を開発しているとアメリカを脅し、交渉のテーブルに座らせたいと考えている」と述べた。

今週初め、金正恩は大会初日の演説で、2016年に策定した5カ年計画のほぼ全てを達成することができなかったと認めた。

北朝鮮はコロナウイルス感染者は1人もいないと主張したにも関わらず国境を封鎖し、中国との貿易は昨年から約80%も減少した。また、昨年夏の台風と洪水は国内の作物と民家を押し流した。

専門家は、経済の急速な悪化が1990年代のような飢饉につながる恐れもあると指摘している。

2020年11月15日 AP通信/北朝鮮、金正恩

金正恩の変遷

・2011年12月17日、最高指導者に就任。

・2011年12月24日、朝鮮人民軍の最高司令官に就任。

・2012年1月9日、金正恩を称え、忠誠心を示す大規模な集会が開催される。

・2012年4月11日、「永遠の書記長」に就任。

・2012年4月13日、国防委員会委員長に就任。

・2012年4月15日、金日成生誕100周年を祝う軍事パレードを開催。

・2012年7月、朝鮮人民軍の元帥に就任。

・2012年7月、楽団のコンサートを鑑賞。金正日との違いを世界にアピールした。

・2012年11月、全長500m(推定)のプロパガンダメッセージを世界に公開。そこには「金正恩長老、輝く太陽!」と書かれていた。

・2012年11月30日、中国の李建国と会談。

・2014年3月9日、最高人民会議の代表を決める強制国民投票が実施され、金正恩は国防委員会の初代議長に就任した。(投票率100%、反対票ゼロ)

・2016年6月29日、国務委員会の議長に就任。

・2017年9月、地下核実験を決行。

・2018年3月、中国の習近平 国家主席と会談

・2018年4月27日、南北首脳会談。北朝鮮の指導者が韓国の領土に入ったのは朝鮮戦争終結以来初めてだった。双方は、朝鮮戦争休戦協定を完全な平和条約に転換し、65年後に朝鮮戦争を正式に終結させることに合意した。

・2018年5月26日、南北首脳会談。

・2018年6月12日、米朝首脳会談。アメリカのトランプ大統領は韓国との「挑発的な」合同軍事演習を中止すると発表した。

・金正恩とトランプ大統領は共同声明に署名し、北朝鮮の安全保障、新たな平和関係の構築、朝鮮半島の非核化、兵士の遺骨の回収、高官によるフォローアップ交渉の継続に合意した。

・2018年8月13日、南北首脳会談。

・2018年9月18日、南北首脳会談。

・2019年2月27日~28日、米朝ハノイサミット。トランプ大統領は声明で、「北朝鮮が経済制裁の早期終了を望んだため、首脳会談は短縮された」と発表した。

・2019年4月25日、ロシアのプーチン大統領と会談。

・2019年6月30日、米朝首脳会談。トランプ大統領と金正恩は握手を交わした

・2019年10月5日、アメリカと北朝鮮の高官レベルの交渉が始まったが、1日後に決裂した。

・2020年4月、約3週間公の場から姿を消したことで「死亡説」が流れた。

・2020年8月、妹の金与正を事実上の副司令官に任命。

・2020年9月5日、台風メイサーク(9号)の被災地を視察。

・2020年10月、コロナウイルスとの戦いを制したと宣言。

・北朝鮮の核戦力は、爆弾15~60発、水素爆弾を含むミサイルタイプを数基保有していると考えられている。

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