◎金正恩は第8回朝鮮労働党大会最終日の演説の中で、コロナウイルスと制裁で崩壊した経済を立て直すために自国の核戦力を強化すると誓約した。
◎金与正(金正恩の妹)「韓国人は理解しがたい奇妙な集団だ。彼らは馬鹿であり、世界に笑いを提供することだけに熱心である」
1月12日、北朝鮮の金正恩は第8回朝鮮労働党大会最終日の演説の中で、コロナウイルスと制裁で崩壊した経済を立て直すために自国の核戦力を強化すると誓約した。
また、金正恩の妹で指導部のNo2と考えられている金与正は、韓国政府が北朝鮮の軍事パレードをしつこく追跡していると批判した。
朝鮮労働党大会は北朝鮮の最高意思決定機関である。
最高指導者就任以来最大の困難に直面している金正恩の発言は、世界の注目を集めた。
北朝鮮の経済は、コロナウイルス関連の国境封鎖、昨年夏の台風被害、そしてアメリカ主導の厳しい制裁に打ちのめされ、荒廃した。
朝鮮中央通信によると、金正恩は閉会の挨拶の中で、「核抑止力の強化および、最強の軍事力を構築するためにあらゆる努力を払う必要がある」と述べたという。
金正恩の誓約を聞いた約7,000人の朝鮮労働党員は、万雷の拍手で指導者を称えた。
金正恩:
「あらゆる種類の脅威や予期せぬ状況に対処できるように、軍隊をより強力にしなければならない。私たちはスピードアップする必要がある」
「敵軍は私たちの努力を阻止しようとするだろう。世界は労働党の宣言と闘争の目標がどのように実現するかを見守っている」
金正恩は労働党員に対し、国家の統制を強化し、農業生産を促進したうえで、今回策定した新5カ年計画で化学および金属産業の発展を推し進めるよう指示した。
韓国のアナリストは金正恩の指示について、「彼が求めたセクターは北朝鮮経済にとって極めて重要であり、パンデミックと制裁の影響を少しでも緩和させたいという思いがあるのだろう」と述べた。
またアナリストは、「市場に対する統制を強化するために劇的な措置を講じる兆候がある」と指摘した。
前指導者、金正日(キム・ジョンイル)はハイパーインフレと国民の不安を招き、それ以来、外貨は北朝鮮の貿易取引と民間市場取引の両方で広く使用されてきた。
朝鮮中央通信によると、労働党は1月17日に議会を開催し、今回の大会で決まった法案を承認する予定だという。
金正恩はアメリカのトランプ大統領とハイレベルな首脳会談を開催したが、最大の目標である制裁解除には至らなかった。
トランプ大統領は北朝鮮の完全なる非核化が制裁解除の条件と主張した。しかし、金正恩は要求を拒否し、二人の関係は破綻した。
金正恩は大会の中で、アメリカを「主要な敵」と位置付けている。
朝鮮中央日報は、「二国間の運命は、ワシントンD.C.が平壌に対する敵対的政策を破棄するかどうかにかかっている」と報じた。
一方、金与正は韓国に対し、「私たちは首都で軍事パレードを開催しているだけだ。誰かを対象とした軍事演習や何かの打ち上げは行っていない」と述べた。
金与正:
「韓国人は理解しがたい奇妙な集団だ。彼らは馬鹿であり、世界に笑いを提供することだけに熱心である」
韓国の統合参謀本部は12日の記者会見で、「1月17日午後に平壌で軍事パレードが開催されるという情報を得た」と述べた。また、当局者によると、それが公式のイベントかリハーサルかは分かっておらず、調査を進めているという。
金正恩の変遷
・2011年12月17日、最高指導者に就任。
・2011年12月24日、朝鮮人民軍の最高司令官に就任。
・2012年1月9日、金正恩を称え、忠誠心を示す大規模な集会が開催される。
・2012年4月11日、「永遠の書記長」に就任。
・2012年4月13日、国防委員会委員長に就任。
・2012年4月15日、金日成生誕100周年を祝う軍事パレードを開催。
・2012年7月、朝鮮人民軍の元帥に就任。
・2012年7月、楽団のコンサートを鑑賞。金正日との違いを世界にアピールした。
・2012年11月、全長500m(推定)のプロパガンダメッセージを世界に公開。そこには「金正恩長老、輝く太陽!」と書かれていた。
・2012年11月30日、中国の李建国と会談。
・2014年3月9日、最高人民会議の代表を決める強制国民投票が実施され、金正恩は国防委員会の初代議長に就任した。(投票率100%、反対票ゼロ)
・2016年6月29日、国務委員会の議長に就任。
・2017年9月、地下核実験を決行。
・2018年3月、中国の習近平 国家主席と会談
・2018年4月27日、南北首脳会談。北朝鮮の指導者が韓国の領土に入ったのは朝鮮戦争終結以来初めてだった。双方は、朝鮮戦争休戦協定を完全な平和条約に転換し、65年後に朝鮮戦争を正式に終結させることに合意した。
・2018年5月26日、南北首脳会談。
・2018年6月12日、米朝首脳会談。アメリカのトランプ大統領は韓国との「挑発的な」合同軍事演習を中止すると発表した。
・金正恩とトランプ大統領は共同声明に署名し、北朝鮮の安全保障、新たな平和関係の構築、朝鮮半島の非核化、兵士の遺骨の回収、高官によるフォローアップ交渉の継続に合意した。
・2018年8月13日、南北首脳会談。
・2018年9月18日、南北首脳会談。
・2019年2月27日~28日、米朝ハノイサミット。トランプ大統領は声明で、「北朝鮮が経済制裁の早期終了を望んだため、首脳会談は短縮された」と発表した。
・2019年4月25日、ロシアのプーチン大統領と会談。
・2019年6月30日、米朝首脳会談。トランプ大統領と金正恩は握手を交わした。
・2019年10月5日、アメリカと北朝鮮の高官レベルの交渉が始まったが、1日後に決裂した。
・2020年4月、約3週間公の場から姿を消したことで「死亡説」が流れた。
・2020年8月、妹の金与正を事実上の副司令官に任命。
・2020年9月5日、台風メイサーク(9号)の被災地を視察。
・2020年10月、コロナウイルスとの戦いを制したと宣言。
・2021年1月、第8回朝鮮労働党大会で党総書記に就任。
・北朝鮮の核戦力は、爆弾15~60発、水素爆弾を含むミサイルタイプを数基保有していると考えられている。