◎燃料価格の高騰に抗議するデモは西部マンギスタウ州のジャナオゼンから全国に拡大し、一部のデモ隊は政治的な不満を警察にぶつけた。
1月7日、カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は最大都市アルマトイを含む主要都市の暴動に関与した「テロリスト」の殺害を許可した。
燃料価格の高騰に抗議するデモは西部マンギスタウ州のジャナオゼンから全国に拡大し、一部のデモ隊は政治的な不満を警察にぶつけた。
内務省によると、デモ隊と治安部隊の衝突は5日にエスカレートし、警察官18人が死亡、700人以上が負傷したという。また省は、暴動に関与した26人を射殺し、3,800人以上を拘束したと明らかにした。
政府は昨年末頃から調理や暖房などに使用する液化石油ガス(プロパンガス)の価格を引き上げ、その価格は1月1日時点で従来の倍以上に値上がりしていた。ガソリンやディーゼルの価格も上昇している。トカエフ大統領は6日の声明で燃料価格に上限を設定し、価格の上昇を抑えると発表した。
AP通信などによると、トカエフ大統領の支援要請を受けた集団安全保障条約機構(CSTO)のロシア軍平和維持部隊は6日に現地入りし始めたという。ロシアは兵士2,500人を派遣する予定。
トカエフ大統領は7日に放送されたテレビ演説の中で暴動に関与した市民を「テロリスト、盗賊、過激派」と呼び、強い言葉で非難した。「私は軍と法執行機関に警告なしでテロリストを殺すよう命じました。降伏しない者は排除されます」
ロシアのイタルタス通信によると、暴徒化した市民は6日に最大都市アルマトイの大統領宅や市長室を襲撃し、火を放ったという。この襲撃で死傷者が出たかどうかは明らかにされていない。
アルマトイでは7日にも複数の衝突が報告された。イタルタス通信によると、地元の放送局の建屋で火災が発生したという。詳細は不明。
一方、地元メディアが報じた映像を見ると、暴動は勢いを失ったように見える。報道によると、首都ヌルスルタンのインターネット通信は7日の早朝に部分的に復旧したという。また、政府は鉄道の運行を再開すると発表した。
ロシア軍のイゴール・コナシェンコフ少将は7日の記者会見で、「アルマトイの空港は抗議者の襲撃を受け占領されていたが、カザフスタンの法執行機関とCTSO軍の管理下に戻った」と述べた。しかし、カザフの国営メディアによると、空港は少なくとも9日までは閉鎖状態を維持する見込みだという。
トカエフ大統領は、ロシアを含む同盟国から派遣された兵士はデモ隊とは戦わず、政府機関の防衛任務をサポートすると主張している。これまでに配備されたロシア軍などが暴動の抑制に関与したかどうかは不明。
CTSO軍の迅速な介入はカザフの近隣諸国、特に国境を接するロシアの懸念を強く反映している。
カザフスタンは中央アジアを代表する天然資源に恵まれた国のひとつで、ロシアにとって重要な戦略的拠点のひとつである。ロシアのロケット発射場、バイコヌール宇宙基地はカザフスタンにある。
EUを統括する欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は7日、「情勢を慎重に見守っている」と述べた。
ドイツの外務省はトカエフ大統領の射殺命令を精査していると述べた。「民間人に対する実弾の使用は最後の手段であることを明確にする必要があります...」
米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、CSTOへの支援要請に疑問を投げかけた。「カザフスタン政府は法と秩序と抗議者の権利を尊重しつつ問題に対処できる能力を持っているように思われます。彼らが外部に支援を求めた理由は分かりません」
国連の報道官はトカエフ大統領の射殺命令について、公の秩序を確立しながら人権と国際基準を尊重するよう求めた。「警察官に対する暴力は容認できません。デモに参加した市民の殺害も同様です」
一方、中国の習近平 国家主席はトカエフ大統領の取り組みを称賛した。
習 国家主席は国営メディアを通じてトカエフ大統領に哀悼の意を表し、「大統領は危機的な問題に強力な措置を講じ、状況を迅速に落ち着かせた」と称賛した。「カザフスタンは私たちの兄弟であると同時に重要な戦略的パートナーであり、中国はカザフスタンがこの困難な時期を乗り越えるために、可能な範囲で必要な支援を提供する用意があります...」
カザフスタンは中国と欧州を結ぶ「一帯一路構想」に欠かせない地域のひとつと見なされている。