◎トカエフ大統領は5日に放送されたテレビ演説の中で、デモをカザフスタン史上最悪の「黒歴史」と呼び、厳しく対応すると約束した。
1月5日、カザフスタンの主要都市で勃発した抗議デモは急速にエスカレートし、一部の暴徒化した抗議者が大統領官邸を襲撃した。
AP通信などによると、最大都市アルマトイの抗議者は大統領官邸と市長室を占領し、その後火を放ったという。治安部隊は抗議者に発砲したと伝えられている。死傷者の有無は明らかにされていない。
他の都市でも激しいデモが勃発し、治安部隊は催涙ガス弾とスタングレネードで応戦した。
カシムジョマルト・トカエフ大統領は5日に放送されたテレビ演説の中で、デモをカザフスタン史上最悪の「黒歴史」と呼び、厳しく対応すると約束した。「私は大統領として市民の安全と平和を守り、カザフスタンの完全性を保障する義務があります。暴動に関与した者は国の財産を自分のものにしようとする盗賊です...」
報道によると、主要都市のインターネット通信は5日遅くに遮断された可能性が高いという。世界のインターネット通信を監視しているネット・ブロックスは声明で、「カザフの市民は広範なインターネット停電に直面している」と述べた。
政府は4日にアルマトイと西部マンギスタウ州で非常事態を宣言し、その後首都ヌルスルタンを宣言地域に追加した。しかし、それらの都市でも数千人が街頭に押し寄せ、燃料価格の高騰に抗議した。
カザフスタンは石油、天然ガス、ウラン、クロムなどの天然資源に恵まれた国だが、当局は昨年末頃から調理や暖房などに使用する液化石油ガス(プロパンガス)の価格を引き上げ、混乱を引き起こした。AP通信によると、その価格は1月1日時点で従来の倍以上に値上がりしたという。
トカエフ大統領は4日の演説でガス価格を従来の水準に戻すと約束したが、抗議は収まらなかった。
ロシアのイタルタス通信によると、アルマトイの大統領官邸周辺に集まった抗議者は銃器を使って占領を試みたという。当局は5日の声明で、「警察は抗議者に反撃したが、数に圧倒され撤退を余儀なくされた」と報告した。
アルマトイの市長室(政府庁舎のひとつ)を包囲した抗議者は治安部隊の警告にひるむことなく突撃し、火を放った。ソーシャルメディアで共有された動画には、建物から煙が立ち上る様子が映っていた。
アルマトイの警察署長は5日、「過激派は民間人を攻撃し、数百の店舗を破壊、略奪した」と述べた。ロイター通信によると、一部の警察官は抗議者を応援していたという。
アルマトイの抗議者はロシアに本拠を置くラジオ会社の事務所を占領し、機器などを破壊したと伝えられている。イタルタス通信は5日の報道で、「抗議者たちはカザフスタンの国営放送局事務所に押し入った」と報告した。
今回のデモは西部マンギスタウ州のジャナオゼンから全国に拡大した。ジャナオゼンで2011年に発生した暴動では、石油産業の労働者と治安部隊が激しく衝突し、少なくとも14人が死亡、数十人が負傷した。AFP通信などによると、ジャナオゼンでは昨年末から小規模な抗議デモが続いていたという。
ジャナオゼンのデモは3日頃から激しくなり、首都ヌルスルタンと旧首都のアルマトイなどに拡大した。
報道によると、デモを主催する団体や個人は今のところ確認されていないという。
トカエフ大統領は今回の衝突で警察官が死亡したと述べたが、死傷者数は明らかにしなかった。
旧ソ連構成国のカザフスタンは独裁国家であり、2019年に政界を引退したヌルスルタン・ナザルバエフ前大統領は30年にわたって地位を維持した。カザフの憲法は3選を禁止している。