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インドネシア暴動、警察が催涙ガスとゴム弾使用、死者10人に

デモはジャカルタから全国に拡大。スビアント大統領に圧力をかけている。
2025年9月2日/インドネシア、首都ジャカルタ、政府与党に抗議するデモ(AP通信)

インドネシア警察がバンドン市内の大学付近でデモ隊に対し催涙ガスとゴム弾を発射した。学生団体が2日、明らかにした。

首都ジャカルタでは先週、国会議員の住宅手当に抗議するデモが各地で行われ、数千人のデモ参加者が機動隊と衝突。その後、バイク便の運転手が警察の装甲車にはねられ死亡する事件が発生し、暴動に拍車がかかった。

南スラウェシ州マカッサルではデモ隊が地方議会庁舎に放火。複数の死傷者が出た。

デモ隊は24年9月から下院議員580人が月額5000万ルピア(約45万円)の住宅手当を受け取っていたという最近の報告に怒りを爆発させた。

議員の住宅手当は人口の大多数を占める低中所得者層の月収の約20倍に相当する。

地元メディアによると、一連の暴動による死者は10人に、逮捕者は1000人を超えたという。

デモはジャカルタから全国に拡大。スビアント(Prabowo Subianto)大統領に圧力をかけている。

一部の暴徒はデモに乗じて企業や小売店を略奪。地元メディアによると、数千の企業、小売店、一般住宅が被害を受けたという。

デモを主導する大学生たちは議員を含む一部の富裕層が富を独占していると非難。スビアント氏に辞任を求めている。

同国の大学生は民主主義の先駆者と見なされており、1998年に独裁的なスハルト(Suharto)政権を倒した抗議活動でも主導的な役割を果たした。

警察がデモ隊に向けてゴム弾を発射したのはこれが初めてみられる。負傷者の情報はない。

スハルト政権下で軍幹部を務め、政権末期の1990年代後半に民主活動家の拉致を指示した疑いで軍籍を剥奪されたスビアント氏は1日、暴力に対しては断固とした措置を取ると警告した。

インドネシアは1998年のスハルト政権崩壊以降、民主化が進展し、多党制や自由選挙が定着した。

しかし、現在でも政治腐敗やエリート層による権力の独占が深刻な社会問題となっている。

政治家と企業の癒着も問題で、政策が一部の富裕層や大企業に有利に働く傾向がある。このような構造は、庶民の声が政策決定に十分に反映されにくい状況を生み出している。

また、経済成長が続く一方で、都市部と地方、富裕層と貧困層の間で格差が拡大。特に地方の農村部では教育や医療などの公共サービスへのアクセスが都市部に比べて著しく劣っている。

そのため、社会的な移動の機会が限られ、貧困の固定化が懸念されている。

政府は社会保障制度の整備やインフラ投資を進めているが、汚職や非効率な行政が妨げとなることが多い。政治改革とともに、格差是正のための包括的な政策が求められている。

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