インド、インダス川水利条約の再開否定「パキスタンに水送らない」

この条約は世界銀行の仲介によって締結され、インダス川の東側の支流3本をインド、西側の支流2本をパキスタンが利用することを定めている。
インドのインダス川(Getty Images)

インドのシャー(Amit Shah)内相は21日、同国とパキスタンの間で1960年に締結した「インダス川水利条約」の履行停止が解除されることはないと表明した。

シャー氏は主要紙タイムズ・オブ・インディアのインタビューで、インダス川水利条約の履行停止は今後も維持され、パキスタン側に流れる水を全て国内向けに転用すると語った。

インドのジャンムー・カシミール州で4月末に観光客が殺害された後、両国の緊張は一気に高まり、本格的な戦争に発展する可能性もあったが、両国は5月10日、米国の仲介を受け、完全かつ即時の停戦に合意した。

この事件はジャンムー・カシミール州近郊の山岳地帯にある観光地で4月22日に発生。正体不明の武装集団が観光客に向けて発砲し、26人が死亡、17人が負傷した。その多くがインド人であった。

インド政府はこの事件を受け、パキスタン国民に発行したすべてのビザ(査証)を剥奪し、インダス川水利条約の履行を停止するなどの対抗措置を講じた。

この条約は世界銀行の仲介によって締結され、インダス川の東側の支流3本をインド、西側の支流2本をパキスタンが利用することを定めている。

インドはこの条約でパキスタンの農地の80%への水供給を保証していた。

パキスタン政府はジャンムー・カシミール州の事件への関与を否定している。

両核保有国は米国の仲介で停戦に応じたが、条約は依然として機能停止状態にある。

シャー氏はインタビューの中で、「履行はずっと続く」と語った。

またシャー氏は「パキスタンに流れていた水をラジャスタン州に導く運河を建設し、パキスタンは不当に得ていた水を奪われることになるだろう」と述べた。

ロイター通信は先月、インドがパキスタン側に水を供給してきた支流に通じる運河を建設する予定であると報じていた。

専門家はこれは報復措置のひとつと指摘している。

ジャンムー・カシミール州のテロ攻撃の容疑者は特定されておらず、捜査が進んでいるかも不明である。

両国はカシミールの境界で激しい銃撃・砲撃戦を繰り広げた。パキスタンは40~50人のインド兵を殺害したと主張している。

両国はその後、陸、空、海におけるすべての軍事行動を直ちに停止することで合意した。

インドとパキスタンはそれぞれカシミールの一部を管理している。この係争地をめぐる領有権争いが解決する目途は立っていない。

カシミールでは24年9月末頃から暴力事件が急増し、多くの市民が爆弾テロや銃撃戦に巻き込まれてきた。

インドのカシミールの反政府勢力は1989年の武装蜂起以来、中央政府と戦ってきた。カシミールで生活するイスラム教徒の多くがパキスタンへの編入か独立という反政府勢力の目標を支持している。

インド政府は2019年、「歴史的大失態」の是正として、70年間に渡って認めてきたジャンムー・カシミール州の自治権を剥奪した。

ジャンムー・カシミール州はインドで唯一、イスラム教徒が多数派の州であり、ヒンズー政策を推進する政府と何度も対立してきた。

インドは21年、射程5000キロの核搭載可能大陸間弾道ミサイル「アグニ5」の発射実験に成功。これは長距離地対地弾道ミサイルである。

インドは1947年にイギリスから独立して以来、パキスタンと3度の戦争を戦ってきた。これらのミサイルはパキスタンの全国土を射程に収めている。

パキスタンも核保有国であり、中長距離ミサイルの開発を進めている。

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