インド政府、パキスタン北西部で発生した自爆テロへの関与否定

インドとパキスタンの関係は4月末から5月初めにかけての紛争で劇的に悪化した。
2025年4月22日/インド、ジャンムー・カシミール州、銃撃事件が発生した現場近く(ロイター通信)

インド外務省が29日、隣国パキスタンの北西部で発生した自爆テロにインドが関与しているというパキスタン政府の主張を一蹴した。

このテロはパキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州の北ワジリスタン地区で28日に発生。爆弾を積んだ車が軍の車列に突っ込み、兵士少なくとも13人が死亡、民間人を含む20人以上が負傷した。

犯行声明を出した組織は確認されていないが、隣国アフガニスタンに拠点を置く同国最大の武装勢力TTP(パキスタンのタリバン運動)に疑惑の目が向けられている。

パキスタンの地元メディアは政府高官の話しとして、「このテロにインド当局が関与している」と報じたが、その証拠は示さなかった。

インド外務省は声明で、「インドはパキスタンで発生したとされるテロに一切関与しておらず、偽情報が拡散していることに強く抗議する」と述べた。

アフガンと国境を接するカイバル・パクトゥンクワ州では近年テロが多発。その多くにTTPが関与している。

TTPとアフガンのタリバンは別組織だが、思想は共有している。TTPは現在、アフガンの山岳地帯に潜伏しているとみられ、2022年11月に中央政府との停戦協定を一方的に打ち切った。

インドとパキスタンの関係は4月末から5月初めにかけての紛争で劇的に悪化した。

インドのジャンムー・カシミール州で4月末に観光客が殺害された後、両国の緊張は一気に高まり、本格的な戦争に発展する可能性もあったが、両国は5月10日、米国の仲介を受け、完全かつ即時の停戦に合意した。

この事件はジャンムー・カシミール州近郊の山岳地帯にある観光地で4月22日に発生。正体不明の武装集団が観光客に向けて発砲し、26人が死亡、17人が負傷した。その多くがインド人であった。

インド政府はこの事件を受け、パキスタン国民に発行したすべてのビザ(査証)を剥奪し、インダス川水利条約の履行を停止するなどの対抗措置を講じた。

この条約は世界銀行の仲介によって締結され、インダス川の東側の支流3本をインド、西側の支流2本をパキスタンが利用することを定めている。

インドはこの条約でパキスタンの農地の80%への水供給を保証していた。

パキスタン政府はジャンムー・カシミール州の事件への関与を否定している。

この事件の容疑者は特定されておらず、捜査が進んでいるかも不明である。

両国はカシミールの境界で激しい銃撃・砲撃戦を繰り広げた。パキスタンは40~50人のインド兵を殺害したと主張している。

両国はその後、陸、空、海におけるすべての軍事行動を直ちに停止することで合意した。

インドとパキスタンはそれぞれカシミールの一部を管理している。この係争地をめぐる領有権争いが解決する目途は立っていない。

カシミールでは24年9月末頃から暴力事件が急増し、多くの市民が爆弾テロや銃撃戦に巻き込まれてきた。

インドのカシミールの反政府勢力は1989年の武装蜂起以来、中央政府と戦ってきた。カシミールで生活するイスラム教徒の多くがパキスタンへの編入か独立という反政府勢力の目標を支持している。

インド政府は2019年、「歴史的大失態」の是正として、70年間に渡って認めてきたジャンムー・カシミール州の自治権を剥奪した。

ジャンムー・カシミール州はインドで唯一、イスラム教徒が多数派の州であり、ヒンズー政策を推進する政府と何度も対立してきた。

インドは21年、射程5000キロの核搭載可能大陸間弾道ミサイル「アグニ5」の発射実験に成功。これは長距離地対地弾道ミサイルである。

インドは1947年にイギリスから独立して以来、パキスタンと3度の戦争を戦ってきた。これらのミサイルはパキスタンの全国土を射程に収めている。

パキスタンも核保有国であり、中長距離ミサイルの開発を進めている。

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