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インドと中国、5年ぶりの直行便再開へ

2020年に発生したインドと中国の国境衝突は、両国が領有権を主張する係争地、ラダック地方のガルワン渓谷において発生した深刻な軍事的対立である。
中国の習近平 国家主席(右)とインドのモディ首相(Getty Images/AFP通信)

インド外務省は2日、同国と中国が今月、指定都市間の直行便を再開すると発表した。

中国はインドの最大の貿易相手国であるにもかかわらず、2020年以降、直行便を運航していなかった。

インドの航空会社インディゴは、10月26日からコルカタ・広州間の直行便を開始すると発表。また、ニューデリーと中国都市を結ぶ路線の開設も計画しているとのこと。

モディ(Narendra Modi)首相は先月、7年ぶりに中国を訪問し、上海協力機構(SCO)の安全保障会議に出席した。

モディ氏と習近平(Xi Jinping)国家主席は、ライバルではなく開発パートナーであることに合意し、世界的な関税の不確実性の中で貿易関係を強化する方法について協議した。

またモディ氏は、関係改善に向けた決意を伝え、992億米ドル近くに達する中国との貿易赤字の拡大について懸念を表明した。

2020年に発生したインドと中国の国境衝突は、両国が領有権を主張する係争地、ラダック地方のガルワン渓谷において発生した深刻な軍事的対立である。この衝突は6月15日に発生し、少なくともインド軍側で20人の兵士が死亡、中国側も複数の死傷者が出たとされる。これは両国間で1975年以来初めて死者を伴った武力衝突であり、インドと中国の緊張関係を一気に高めた。

背景として、インドと中国はヒマラヤ山脈を挟んで広範囲にわたる国境線の確定に関して対立しており、特にラダック地方とアルナーチャル・プラデーシュ州を巡る領有権争いが続いてきた。1962年には両国間で国境戦争が勃発し、その後も散発的な衝突があったが、大規模な戦闘は避けられていた。ところが2020年初頭から、中国軍が実効支配線(LAC)を越えてインフラ建設や部隊展開を進め、インド側もそれに対抗して兵力を増強したことで、双方の緊張が高まっていた。

ガルワン渓谷での衝突は銃火器を使用しない肉弾戦で行われ、石や鉄棒、棍棒などが使用されたと報告されている。これは両国が過去に合意した「国境地帯での発砲禁止協定」によるものだが、死者が出たことでその有効性にも疑問が投げかけられた。衝突後、両国は外交および軍事レベルでの協議を開始し、一時的な緊張緩和が図られたが、根本的な対立の解消には至っていない。

この衝突は地域情勢だけでなく、国際社会にも大きな影響を与えた。インド国内では中国製品の不買運動や経済的な制裁措置が強まり、アプリの禁止措置なども講じられた。また、米国やオーストラリアなど、中国の影響拡大を懸念する国々との連携が強まり、インド太平洋地域における地政学的バランスにも変化をもたらした。

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