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インド・ニューデリーの大気質悪化、当局が汚染規制を強化

デリーおよび周辺の大気質指数(AQI)は複数のモニタリング地点で450を超え、前日の430からさらに悪化した。
2025年11月27日/インド、スモッグに覆われたムンバイ(ロイター通信)

インド政府は14日、首都ニューデリーとその周辺地域で大気汚染が季節最悪レベルに悪化したことを受け、大気汚染対策を強化したと発表した。

中央汚染管理委員会(CAQM)は同日、段階的対応行動計画(GRAP)の最も厳しい第4段階措置を発動。これは汚染レベルが危険な水準に達した場合に実施される緊急対策である。

デリーおよび周辺の大気質指数(AQI)は複数のモニタリング地点で450を超え、前日の430からさらに悪化した。AQIが50未満であれば「良好」、450超は「極めて有害」な汚染レベルであり、健康被害が広範囲に及ぶ可能性が高い値だ。今回の値は今冬のシーズンで最も高い水準となっている。

当局はGRAP第4段階の発動により、古いディーゼルトラックのデリー域内への進入禁止、建設工事の中止、学校の授業形態変更(オンライン授業の導入)などを命じた。また、非必須の大型車両や高排出車両の移動制限なども含まれている。これらの措置は排出源の削減を目的としているが、経済・社会活動への影響も懸念される。

規制強化の背景には冬季特有の気象条件がある。湿度の高さと風の停滞により、汚染物質が拡散せず都市部上空に留まりやすくなり、スモッグが発生しやすい状況が続いている。車両や建設現場からの排気ガス、粉じん、さらには近隣州での農業残渣の焼却などが複合して大気汚染を悪化させているとみられている。

政府は住民に対し、極端な健康リスクに注意するよう呼びかけている。特に子ども、高齢者、呼吸器や心疾患を持つ人には外出を控えるよう勧告している。外出する際はマスクの着用が推奨されており、不要不急の外出自粛が求められている。

デリー首都圏には約3000万人が居住しており、通常の生活に大きな影響が出ている。視界が著しく悪化し、通勤・交通にも支障が出ている地域もある。過去にもデリーでは冬季に大気質が深刻に悪化し、継続的に健康被害や視界不良などが問題視されてきた。

今回のGRAP第4段階は汚染が一時的なものではなく、気象と人間活動の組み合わせによる悪化傾向が顕著になったことを示すものであり、短期間での改善は見込みにくいとの見方もある。専門家は長期的な大気質改善には交通インフラの電化促進や厳格な工場排出基準の導入、農業残渣処理の改善といった根本的対策が必要だと指摘している。

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