中国で「日本人気」続く、関係悪化も消費主義がナショナリズム上回る
都市部の中間層や若年層を中心に、質やデザイン、価格といった観点で商品やサービスを選ぶ傾向が強まっており、純粋な愛国的購買行動は以前ほど消費行動に影響を与えなくなっているようだ。
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中国では米国や日本との外交・貿易上の緊張が高まっているにもかかわらず、多くの消費者が国威発揚的なナショナリズムよりも個々の消費価値を優先している。都市部の中間層や若年層を中心に、質やデザイン、価格といった観点で商品やサービスを選ぶ傾向が強まっており、純粋な愛国的購買行動は以前ほど消費行動に影響を与えなくなっているようだ。
中国共産党はこれまで、領土や主権に関する問題をめぐる摩擦が起きるたびにナショナリズムを煽り、反発の矛先を政府の政策支持につなげる手法を採用してきた。台湾やチベットを巡る立場の相違が代表例であり、特定企業が政治的に敏感な表現で批判されると、政府は消費者に対してボイコットを呼びかけたり、広告内容の訂正を要求することもあった。過去には日本製品の不買運動や抗議デモ、米国企業への攻撃的な反応が見られたが、こうした動きによる消費行動への影響は近年薄れてきているという。
実際、北京や上海などの大都市では、外交上の摩擦があるにもかかわらず、日本などの外国ブランドが高い人気を維持している。日本発の回転寿司チェーン「スシロー」は中国本土で大成功を収め、若い消費者が長時間行列を作る光景が見られる。また、日本の漫画・アニメ作品『ちいかわ』も中国の若者の間で高い人気を誇っている。これらは、政治的緊張が個々の消費者の選択に直結していない具体例として挙げられている。
米国文化も同様に受け入れられている。昨年公開されたディズニー映画『ズートピア2』は中国国内で記録的な興行収入を上げ、コスプレを楽しむファンも多く見られた。ラルフローレンなど米国発のファッションブランドも都市部の消費者から支持を集め、「品質やブランドイメージが購買の主要な決め手」との分析が出ている。
こうした消費者行動の背景には、コロナ後の疲弊した経済環境や将来不安、生活の質の向上への志向があると指摘される。中国市場調査会社の専門家は「市民は単にストレス解消や楽しみを求めており、どの国の製品かは購買の第一条件ではない」と話す。愛国的消費の象徴として一時注目された「国潮(グオチャオ)」と呼ばれる中国ブランド支持の流れも成熟し、消費者は外国ブランドと中国ブランドを柔軟に選択するようになっている。
ただし、ナショナリズムが完全に消えたわけではない。政府系企業や公的機関を中心に、日本への渡航警告や団体旅行のキャンセルが相次ぐなど、制度的・集団的な反応は続いている。例えば、中国から日本への渡航者数は大幅に減少したが、個人旅行は依然として継続しているとの報告もある。こうした点は、政治的な緊張が消費者行動全体にどこまで影響を及ぼすかについて、今後も注視が必要だと指摘されている。
消費者の購買行動と外交的ナショナリズムの乖離は、中国の社会構造や価値観の変化を映し出す現象として海外でも関心を集めている。政府関係者や企業は政治的圧力と市場原理のバランスをいかに保つかという課題に直面しており、今後の中国消費市場の動向が引き続き注目される。
