ミャンマー軍政トップが権力を維持する理由、協定、縁故主義、そして恐怖
フライン氏は2021年のクーデターでアウンサンスーチー氏の政権を打倒して以来、武力支配と政権構造の再編を通じて体制を維持してきた。
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ミャンマーで昨年末に始まった総選挙で、軍事政権トップのフライン(Min Aung Hlaing)総司令官が依然として圧倒的な影響力を持っていることが改めて明らかになった。名目上は文民による政権移行を目指す選挙が行われているが、実際の政治的権力は軍部とその支配層が掌握しており、フライン氏の地位は揺るがないままだ。
フライン氏は2021年のクーデターでアウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi)氏の政権を打倒して以来、武力支配と政権構造の再編を通じて体制を維持してきた。スーチー氏の政党・国民民主連盟(NLD)は解散を余儀なくされ、主要な野党の多くが選挙に参加していない。国連や西側の人権団体は今回の選挙を自由でも公正でもないとして強く批判している。
軍と連携する与党的存在の「連邦団結発展党(USDP)」は退役将校らが率いる体制支持勢力として第1段階投票で多数の議席を獲得した。これにより軍部は選挙を通じて体制の正当性を演出しながら、実質的な権力掌握を維持している。総選挙は3段階に分けて実施され、最終投票は1月25日に予定されているが、選挙後も軍の影響力が強い政府が形成される見通しだ。
ロイター通信の取材に応じた軍事情勢に詳しい分析者らは、フライン氏が単に軍事的な強権を振るうだけでなく、エリート層の統制や見せかけの権力分散を巧みに利用していると指摘する。軍内の有力将校に利益となる地位や資源を配分すると同時に、潜在的な競争相手を抑え込む戦略を取ることで、内部の結束を維持しているという。こうした「政治的取引」と「恩顧(パトロネージ)」の構造が、軍の統治を支えているとの見方が示された。
フライン氏は新年の演説で、「国家責任」を次期政権に委ねる意向を示したが、実際には軍の役割を維持する道筋を模索しているとの批判もある。軍政起草の憲法下では、大統領が行政権を持つものの軍部への指揮権は与えられない仕組みであり、政権のキーマンは事実上軍部幹部となる見込みだ。
ミャンマーではクーデター以降、激しい内戦が続いており、独立系研究機関のデータでは1万6600人以上の民間人が戦闘で死亡したとされる。軍の権威は戦場での敗北や国際的孤立にもかかわらず、内部のエリート連合と外部支持を通じて維持されている。特に中国からの外交支援がフライン氏の立場を補強しているとの分析もある。
軍政はASEAN加盟国との関係修復にも動き、元国連大使らが外交窓口として機能している。フライン氏は軍のトップ職を後任に譲る可能性を示唆しつつも、自身は政治的役割を続ける意向も示しており、実権移譲が形だけのものにとどまるとの見方が強い。
こうした情勢は、民主化を求める勢力と軍政との対立が続く中、ミャンマーの将来の政治構図に深い影響を及ぼす可能性がある。国際社会は選挙の透明性と平和的解決への圧力を強めているが、軍部の支配体制は簡単には揺らがない状況だ。
