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インドの地方都市にファストファッション進出、課題も

地方の消費者にとってファストファッションの利便性と選択肢の広がりが、日常的な買い物のあり方を変える原動力となっている。
インド、首都ニューデリーのアパレルショップ(Getty Images/AFP通信)

インドの地方都市で低価格のファストファッションが急速に広がり、これまで地元の市場や無ブランド衣料が主流だった消費文化に変化が生じている。大都市に限られていた組織化されたアパレル小売が、地方の人口層にまで浸透しつつあるという。

西部マハラシュトラ州郊外にある3階建ての衣料店では、地元の女性や若者が最新デザインの服を手に取り、試着室でコーディネートを確かめる光景が日常になっている。これまで多くの市民は白ラベル商品を露店で購入していたが、空調の効いた店舗での商品選択やスタッフの接客、割引キャンペーンを伴う買い物体験が新鮮だという声が多い。

こうした店を展開するのは大手財閥の小売部門が運営する「Trends」や、タタグループ傘下の「Zudio」などの予算重視ブランドだ。これらのブランドは路上の無名商品とほぼ同等の価格帯で最新トレンドを取り入れた衣料品を提供することで、消費者の支持を集めている。価格はほとんどの商品が4ドルから15ドル程度で、デザインの新しさやブランド名に対する期待感が購入動機となっている。

特にZudioは近年目覚ましい成長を見せている。2018年にはインド全土でわずか7店舗、売上は約1200万ドルだったが、2025年半ばまでに765店舗、売上高は10億ドルを突破した。これは国際的なファストファッション大手ブランドを凌ぐ勢いで、予算志向の購買層と若年消費者の支持を背景に店舗数を急増させている。

このようなファストファッションの浸透はインドの小都市における消費パターンそのものを変えつつある。地元の消費者は以前、衣料品の購入に際して価格重視で露店や卸売市場を選び、ブランド商品や店舗体験は都市部の富裕層の特権だった。しかし今や、ブランド商品を手に入れることが地方でも身近になり、「ブランド志向」と「快適なショッピング体験」が生活の一部となりつつある。

専門家はこの背景について、所得の伸び悩みが続く中でも人々が「財布の使い方」を変え、従来の非組織化市場から大手チェーンの安価ブランドへの支出シフトが進んでいると分析する。つまり、消費者の購買額が大幅に増えているわけではなく、既存の消費支出が無名商品からブランド商品へと移行しているという構図だ。

こうした動きは地方経済にとっては新たなビジネス機会を生む一方で、従来の小規模な商店には競争圧力として作用している。個人商店は低価格で独自商品を扱っていたものの、冷房完備の清潔な環境や豊富な在庫、トレンドを反映したデザインを提供する店舗との競争では苦戦を迫られている。一方で、このファストファッションの急成長には環境負荷への懸念も伴う。繊維産業はインドでも大量の廃棄物問題や資源使用が課題となっており、持続可能性への取り組みが遅れているとの指摘もある。大量の低価格衣料を短期間で販売するビジネスモデルは使い捨て型の消費を助長し、廃棄衣料が増える要因ともなっている。

とはいえ現時点では、地方の消費者にとってファストファッションの利便性と選択肢の広がりが、日常的な買い物のあり方を変える原動力となっている。インドの小都市におけるファッション市場はさらなる変化の途上にあるとみられる。

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