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AIツールがインドの女性の家事負担を軽減、課題も

インドはAIの導入を急速に進める国の一つであり、技術系労働者の約92%が職場でAIを利用しているとの調査結果もある。
インド国籍の女性(Getty Images)

インドの都市部に暮らす働く女性たちの家庭での負担が、人工知能(AI)ツールの普及によって軽減されつつある。レストラン向けの業務導入などでAI活用を推進してきたバンガロール在住の37歳女性は職場だけでなく家庭でのAIの利便性を強調する。「買い物リストや栄養バランスを考えた食事計画の作成で、AIに助けられた」と振り返り、冷蔵庫に貼った食事プラン表を見ながら日々の生活をこなすようになったという。こうした体験は多くの都市部の女性にも広がっている。

インドはAIの導入を急速に進める国の一つであり、技術系労働者の約92%が職場でAIを利用しているとの調査結果もある。これは世界平均を大きく上回る数字であり、同国がAI市場としても急成長していることを示している。AIは仕事だけでなく家庭内の雑事でも使われ、都市部の働く女性たちの「メンタル・ロード(精神的負荷)」を軽減している。

具体的には、チャットボットや生成AIが買い物リストの整理、献立の計画、学校の案内文の要約、教師への連絡文のドラフト作成といった日常的なタスクを効率化している。ムンバイのコンテンツクリエーターで2児の母親はロイター通信の取材に対し、「こうしたツールによりブラウザで多数のタブを開いて迷っているような状態が改善され、時間の節約に役立っている」と語った。

別の女性も、子どもの遊びプランやバランスの取れた食事案を生成するなど、創造性や日常管理にAIを活用しているという。

専門家はこうしたAIの利用が単なる「便利さ」以上の意味を持つと指摘する。AIツールは「単なる利便性ではなく、家庭や職場の両立を求められる女性たちの伴侶のような存在」になりつつあると分析する。インド社会では依然として家族や義理の家族、仕事を同時にこなすことが期待される文化が強く、こうした期待の中でAIは精神的負荷を分散する役割を果たしているという。

一方で、AIには限界やリスクもある。文化的背景や地域ごとの食文化といった細かなニュアンスは、現行のAIモデルでは十分に把握しきれない場合があるとの指摘がある。ある利用者は、冷蔵庫の残り物で料理の提案を求めた際に、自身の家庭文化とは合わない提案を受けたと語る。また、プライバシーの問題も重要な課題として浮上している。家庭内の詳細な情報、子どもの健康状態や学校のスケジュールなどをチャットボットに入力すると、データ保護法の適用対象になる可能性があり、扱いには慎重さが求められるとの専門家の意見もある。

このように、AIはインドの都市部で忙しい女性たちの家庭生活をサポートし、時間管理やストレス軽減に寄与する一方で、文化的・プライバシー面での課題も抱える。AI技術の進化がこうした日常生活の負担軽減にどこまで寄与できるかは、政策や技術開発の方向性とも密接に関連している。長期的には家庭内でのAI活用と個人情報保護の両立が重要なテーマとなる可能性がある。

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