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パナマ運河問題、香港CKハチソンが20億ドルの賠償請求

パナマ運河は世界の海上貿易の要衝で、両端の港湾は物流ネットワークの中核を担う。
2026年2月23日/パナマ、首都パナマシティの港湾ターミナル(AP通信)

香港の複合企業CKハチソン・ホールディングスが運営してきたパナマ運河の主要港をめぐり、同社とパナマ政府の対立が激化している。CKハチソンの子会社パナマ・ポート・カンパニー(PPC)は港湾の「接収」は違法として政府に約20億ドルの損害賠償を求め、国際仲裁を開始した。世界の海上物流の要衝をめぐる争いは米中の地政学的な対立とも絡み、国際的な関心を集めている。

PPCは7日、パナマ政府が運河の両端にある太平洋側のバルボア港と大西洋側のクリストバル港を接収したことについて、国際仲裁の手続きの中で約20億ドルの補償を求めていると発表した。会社側は政府による港湾の占有を「違法な接収」と主張し、投資家の権利が侵害されたとしている。

問題の発端はパナマの司法判断にある。最高裁判所は1月末、同社が港湾を運営するための特許契約が憲法に違反していると判断し、契約を無効とする判決を下した。これを受けて政府は港湾施設を接収、管理下に置く措置を取った。対象となった2つの港は太平洋側と大西洋側に位置し、世界の海上貿易にとって極めて重要な拠点である。

同社は1997年から両港の運営を担当してきた。2021年にはさらに25年間の契約延長が認められ、2047年まで運営を続ける予定であった。しかし、最高裁の判決により状況は一変し、政府は港湾の資産や設備を含めて管理を引き継いだ。当局は国家の利益と公共性を理由に接収を正当化している。

両港の運営は現在、デンマーク海運大手の関連会社などが暫定的に担い、新たな運営権の入札が検討されている。政府は港湾の運営を継続させることで、世界の物流への影響を最小限に抑える方針を示している。

この問題は単なる企業と政府の対立にとどまらない。パナマ運河は米国と中国の影響力争いの象徴的な舞台となっている。米国では港湾を中国系企業が運営していることへの警戒が長く指摘されてきた。一方、中国側は香港企業への圧力や接収を批判する姿勢を示している。

さらに、港湾をめぐる別の大型取引も混乱を招いている。CKハチソンは世界各地の港湾事業を売却する計画を進めており、米国の投資会社ブラックロック率いる企業連合体が買収交渉を行っていた。総額230億ドル規模とされるこの取引にはパナマの港も含まれていたが、政府による接収によって計画は大きく揺らいでいる。

パナマ運河は世界の海上貿易の要衝で、両端の港湾は物流ネットワークの中核を担う。今回の紛争はインフラの管理権や国家主権、さらには大国間の影響力争いが複雑に絡み合う問題となっている。今後、国際仲裁の結果やパナマ政府の港湾政策が、運河を巡る国際政治と物流の動向に大きな影響を与える可能性がある。

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