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香港当局、ジミー・ライ氏の伝記を販売した書店関係者逮捕


問題となっているのは、服役中の実業家で民主活動家のジミー・ライ(黎智英、Jimmy Lai)氏の伝記で、当局はこれを「扇動的出版物」に該当する可能性があるとみている。
2020年4月18日/香港のメディア王ジミー・ライ氏と治安当局者(AP通信/Vincent Yu)

香港で民主派メディア創業者の伝記を販売したとして、独立系書店の関係者が国家安全維持法違反で逮捕されたと報じられ、言論の自由をめぐる懸念が再び高まっている。問題となっているのは、服役中の実業家で民主活動家のジミー・ライ(黎智英、Jimmy Lai)氏の伝記で、当局はこれを「扇動的出版物」に該当する可能性があるとみている。

地元メディアによると、警察は24日、市内の独立系書店「ブック・パンチ」を家宅捜索し、店主と複数の従業員を逮捕したとされる。地元テレビ局は国家安全部門の捜査官が店内に立ち入り、問題とされる書籍を押収したと伝えているが、当局は詳細な説明を控えている。書店はその後、突然の事情により休業する旨の張り紙を掲示し、営業を停止した。

対象となった書籍はライ氏の半生や政治活動を描いた伝記『ザ・トラブルメーカー』で、彼の民主化運動への関与や中国政府への批判的姿勢をつづっている。ライ氏は有力紙「リンゴ日報(Apple Daily)」の創業者として知られるが、同紙は2021年に当局の取り締まりを受けて廃刊に追い込まれた。

ライ氏本人は国安法違反などの罪で有罪判決を受け、今月初めに禁固20年の実刑が確定した。検察は外国勢力との共謀や扇動的な出版活動を行ったと主張し、関連企業も「禁止組織」として登記を抹消された。これにより、これらの組織と関係を持つ行為自体が違法となる可能性があると当局は警告している。

今回の逮捕は2024年に導入された国家安全条例の運用強化の一環とみられている。この法律は扇動行為や国家安全に関わる出版物の取り締まりを強化するもので、違反すれば長期の禁錮刑が科される可能性がある。近年、当局は出版物や言論活動に対する規制を段階的に強化し、独立系書店や出版社への圧力を強めている。

香港では2019年の大規模抗議デモ以降、政治的統制が強化され、メディアや市民社会の活動空間が縮小してきた。かつては多様な言論が許容されていたが、現在は検閲の広がりや団体の解散が相次ぎ、出版業界も大きな影響を受けている。今回の事件も、こうした流れの中で起きた象徴的な出来事と位置付けられる。

国際社会や人権団体は、書籍の販売を理由とした拘束は表現の自由を損なうものだとして懸念を示している。一方で香港政府や中国側は国家安全の確保が最優先であり、法に基づく正当な執行であると主張している。

今回の摘発は香港における言論・出版の自由の現状を改めて浮き彫りにした。政治的に敏感な内容を扱う書籍やメディア活動がどこまで許容されるのか、その境界は一層不透明になっている。

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