6月15日に中国軍とインド軍が衝突。20人のインド兵士が死亡した

6月22日付けの衛星画像によると、中国軍とインド軍の衝突したラダック(ヒマラヤ国境近く)に、中国の施設と思われる新しい建造物が設置された。

バンカー、テント、軍用ハードウェア保管ユニットと思われる施設が、先月まで更地だった地点に設置。専門家は核保有国同士の争いがさらに過熱するかもしれない、と警鐘を鳴らした。

両国が固執するフロンティア(ガルワン渓谷)をめぐる争いは、世界を巻き込む新たな火種になるかもしれない。なお、中国当局は衝突における死傷者の有無、数を公表していない。

この衛星画像は、宇宙技術会社「マクドナルド・デットワイラー・アンド・アソシエイツ(Maxar)」が撮影したものである。写真には、ガルワン川を見下ろす位置に中国のものと思われる新しい建造物が確認できる。

この建造物に関して、インドおよび中国当局はコメントしていない。

ラダック(ヒマラヤ地域)ガルワン渓谷での衝突は、両国の軍事指揮官が「国境地域の状況を平和的に解決する二国間協定」への同意直後に発生した。ただし、両国は緊張状態を和らげる協議に入り、大規模紛争に突入する事態は”ひとまず”避けられた。

6月24日、インド外務省は声明を発表。「6月6日にスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相と中国の王毅(おうき)外相が会談し、国境付近における領土争いの段階的縮小および、双方がそれらを誠実に実施すべきであることを再確認していた」と述べた。

インド国内で防衛アナリストとして活動するアッジャイ・シャクラー氏は、「ガルワン渓谷の支配線(国境ではない)から約1.5kmほどの位置に中国の大規模なキャンプが存在する」とツイートした。

現地メディアによると、中国の新建設物設置(何かしらの増強工事と思われる)は、「外相会談(6月6日)から衝突(6月15日)の間に行われた可能性が高い」という。

ラダック問題の専門家である元インド外交官はBBCの取材に対し、「いつ衝突が起きてもおかしくないと思っていた。インド政府は写真を公開しておらず、公式声明も発表していないため現時点での評価と判断は難しい。しかし、Maxarが公開した衛星写真を見る限り、中国軍が国境付近にインフラを構築し、同地の支配権を主張していることは確かだろう」と述べた。

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ガルワン渓谷

6月15日の衝突を受けインドのナレンドラ・モディ首相は、政府の準備不足と外交政策課題の改善を提言。6月19日には、中国軍による越境行為は認められなかったと述べた。

しかし、ジャイシャンカル外相は「中国軍はインドの国境を越え、支配線を構築している。さらに、ガルワン渓谷に新たな建造物を設置したいと求められた」と発言しており、政権内での矛盾を指摘されている。

インドメディアは、中国軍による攻撃をヘッドラインで伝えた。しかし、中国ではほとんど報道されておらず、大半の国民は何が起こったのかすら知らないという。

中国のシンクタンク、成都世界問題研究所(CIWA)の責任者を務めるロン・シングチャン博士は、緊張緩和に向けての対話が重要であると述べ、「私たちはガルバン渓谷の状況を知らない。お互いが自国の主張を繰り返す中で、中国軍は支配線を拡大させた。しかし、同地域の国境は非常に曖昧である。両国は状況を把握したうえで、平和的に問題を解決すべきだろう」と付け加えた。

ガルワン渓谷での衝突は、標高約4,300mの急峻な尾根で展開された。この衝突により、低温のガルワン川にインド軍兵士が落下した。

ロイター通信によると、インド軍の兵士20人が死亡、少なくとも76人が負傷したという。両軍の衝突は、「ラダックにおける銃と爆発物の使用禁止(1996年調印)」に伴い、銃器なしで開戦。中国軍の投石攻撃がインド軍兵士を直撃した

既に述べた通り、ラダックの国境は明確に定められていない。中国軍の支配線がインド側に浸食し、事実上の国境になってしまう可能性も指摘されている。

インド政府は、中国当局がガルワン渓谷に何千人もの軍隊を派遣したと非難し、自国の領土約38,000㎢を不法占拠した、と主張している。ラダックの国境問題を解決するための会談も複数回行われてきたが。解決には至らずじまいである。

インドは屈辱的な敗北を喫した中印戦争(1962年10月~11月)以降も、ラダックの国境を強く主張し続けてきた。

5月、北東部のシッキム州国境付近で数十人のインド兵士と中国兵士が衝突。2017年には、中国が紛争中のドクラムを通過する国境道路の延長工事を開始し、衝突につながった。

両国間の緊張が高まっている理由はラダックだけではなく、他の国境付近で発生した衝突、国境道路の建設および延長(中国だけでなくインドも実施)なども大きな要因になっている。

ラダックに建設されたインドの道路は、中国の支配線に沿っている。仮に大規模な紛争が発生したら、この道路はインド軍兵士や物資を輸送する重要なインフラになるだろう。アナリストたちは、インフラを強化したインドの措置に北京が激怒したと考えている。

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