ミャンマー総選挙、内戦続く中投票へ、冷ややかな声も
選挙は3段階で実施される予定だが、実際に投票が可能となるのは全303郡のうち265郡に限られる。
ミャンマーでは12月28日から来年1月にかけて軍事政権が主導する総選挙が行われる。軍はこれを「多党制民主主義の再建」と説明し、支持を求めているが、国内外の批判は強く、この選挙が民主的正当性を欠いた「見せかけ」であるとの見方が広まっている。
選挙は3段階で実施される予定だが、実際に投票が可能となるのは全303郡のうち265郡に限られる。民主派勢力の支配地域では投票自体が行われず、選挙管理当局も全域での投票日程や集計方法を公表していない。
民主化運動の指導者アウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi)氏の政党である国民民主連盟(NLD)は選挙登録の不備を理由に解党させられ、選挙に参加していない。NLDに加え、多くの独立系・反軍政政党も登録を拒否されたか、弾圧を受けた結果、出馬の道を閉ざされている。選挙に参加している政党の多くは、軍政と関係が深いか、当局の承認を得た組織であり、有権者の選択肢は限定されている。
選挙キャンペーンの雰囲気は冷ややかであり、かつての活気ある投票風景とは大きく異なる。街頭では軍の関係者が監視に当たり、市民の発言も抑圧されている。最大都市ヤンゴンや第2の都市マンダレーなど都市部の市場や集会でBBCニュースの取材に応じた住民は、投票に向かう理由を問われ、「参加はするが、心からではない」と語った。多くの国民は投票が事実上義務付けられている雰囲気の中、軍政の報復や不利益を恐れながら投票所へ足を運ぶという実情が浮かび上がっている。
この選挙に軍の意向を反映しない独立した監視団の参加はなく、国連や欧米諸国は選挙を「正当性を欠いたもの」として強く非難している。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)や人権団体は、選挙制度そのものが軍の統制下にあり、投票者に対する電子監視や脅迫が行われているとの懸念を示している。また、少なくとも一部地域では武装勢力による襲撃や爆発事件も発生しており、治安の不安定さが選挙実施をさらに困難にしているとの報道もある。
国際社会の対応は分かれている。西側諸国や国連は選挙の「自由公正さ」を否定し、経済制裁や非公式な孤立戦略を維持する方針を示している。一方で、中国やインドなど一部の国は、政権との対話や技術支援を通じて安定化を図る立場を取ると報じられている。軍政側はこうした支持を強調しつつ、「国内の統治基盤を強化するための過程」として選挙の正当性を主張している。
ミャンマー国内では選挙を通じた権力の正統性確立が軍政の狙いであるとの批判が根強い。その一方で、内戦終結や政治的和解を求める声は依然として勢いを持ち、選挙後の情勢は不透明さを増している。こうした状況下で「心のない投票」はミャンマーの政治的分断と苛烈な現実を象徴するものとなっている。

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