キルギス総選挙、選挙監視団が警鐘「基本的人権が制限されている」
選挙前の法制度の大幅な改変やキャンペーン期間の短さ、公共の議論空間の狭さ、候補者や有権者への過度な統制といった問題が指摘された。
.jpg)
キルギス共和国で11月30日に実施された総選挙について、国際監視団は1日、「基本的人権・自由がますます制限されている」と警告した。
この選挙は本来の予定より1年前倒しで実施された。政府与党は次の大統領選挙(2027年予定)との間隔が近すぎるため、前倒ししたと説明していた。
監視団は選挙管理の技術的側面について、全国の投票所で生体認証を用いた新たな電子投票システムが導入されるなど、整備はおおむね行き届いており、「手続き自体は効率的に運営された」と評価した。
しかしその一方で、選挙前の法制度の大幅な改変やキャンペーン期間の短さ、公共の議論空間の狭さ、候補者や有権者への過度な統制といった問題が指摘された。
具体的には、選挙前に野党政治家やジャーナリストに対する逮捕、捜索、取り調べが横行。こうした強い締め付けにより、多くの有権者が「政治活動をすれば報復されるかもしれない」という恐怖から、投票や政治参加を控えたとされる。
監視団によると、選挙運動は「非常に控えめ」で、有権者の関心を引くような活発な選挙戦とは言えなかった。
実際、開票前の段階で多くの地元メディアや専門家は、ジャパロフ(Sadyr Japarov)大統領に近い候補者たちが大多数の議席を確保する見通しだと報じていた。今回の制度変更により、野党は弱体化し、多くの候補者が「独立系」を装いつつ、事実上ジャパロフ氏寄りであるという。
加えて、報道の自由やメディアの独立性にも深刻な影響が及んでいる。選挙前には複数の独立系メディアが「過激派組織」に認定され、事実上の廃刊処分を受けた。こうした動きは言論空間の萎縮と情報の偏りを招き、有権者が十分な判断材料を得ることを難しくしている。
結果として、この選挙は形式的には「手続き通りに実施された選挙」だったものの、民主的な競争、公正な情報環境、自由な政治参加という民主主義の根幹をなす条件が実質的に損なわれた。
監視団は今後、法制度の透明性、メディアの自由、野党の参画を保障する抜本的な改善を強く求めるとしている。キルギス国内でも市民社会や国際的な人権団体の懸念が高まっている。
