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中国軍、台湾周辺で軍事演習開始、10万人を超える旅行者に影響

この演習は台湾の「分離主義勢力」や「外部勢力」に対する「厳重な警告」と位置づけられている。演習は実弾を使用した訓練を含み、台湾周辺の海空域で行われた。
チェスの駒と中台の国旗(ロイター通信)

中国人民解放軍は12月29日、台湾海峡を中心に陸海空およびロケット部隊を動員した大規模な合同軍事演習を開始したと発表した。この演習は台湾の「分離主義勢力」や「外部勢力」に対する「厳重な警告」と位置づけられている。演習は実弾を使用した訓練を含み、台湾周辺の海空域で行われた。

東部戦区の報道官は記者会見で、演習が台湾海峡や島の北部、南西、南東および東部の地域で展開され、制海・制空権の確保や重要港湾の封鎖を想定した訓練が含まれると述べた。

また報道官は「台湾独立勢力および外部干渉勢力に対する断固たる警告であり、中国の主権と国家統一を守る正当かつ必要な行動だ」と強調した。

この軍事行動は米議会が承認を進める巨額の対台湾武器売却計画(110億ドル規模)や、日本の高市(Sanae Takaichi)首相が中国が台湾に軍事行動を取った場合、日本が関与し得るとの見解を示したことを受けた対応との見方がある。中国軍の公式声明では米国や日本について明示していないものの、外務省は台湾の与党・民進党が米国支援を求める行為を「独立志向」と批判している。

台湾政府は中国の軍事演習に強く反発し、防衛態勢を強化した。台湾国防部は声明で、中国共産党の軍事行動は「平和を破壊する行為」であり、地域の安全を脅かすものだと非難するとともに、迅速対応訓練を実施し、部隊を高い警戒態勢に置いていると発表した。

また、台湾の民間航空当局は演習に伴い飛行禁止区域が設けられた影響で、国際線・国内線、多数の便が欠航または迂回を余儀なくされ、10万人を超える旅行者に影響が出ていると明らかにした。

中国の軍事プレゼンスは近年増加傾向にあり、台湾周辺海空域への軍用機や艦艇の展開が頻繁に行われている。今回のような大規模な実弾演習は、台湾海峡の緊張を一段と高めるものとなっており、国際社会でも地域の安定に対する懸念が広がっている。

中国と台湾は1949年の内戦終結以降、それぞれ別の体制で統治を続けている。中国政府は台湾を自国の領土と主張し、最終的な統一を掲げる一方、台湾側は独立した民主主義国家としての立場を維持し、外部からの軍事的圧力に対して自らの防衛能力を強化する姿勢を示している。

今回の軍事演習は数日にわたって継続される見込みであり、台湾海峡周辺の安全保障環境や米中・日中関係に与える影響が今後も注視される。各国政府は情報収集と外交的対話を進めるとともに、地域の緊張緩和に向けた対応を模索するとみられる。

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