中国の「コンドーム税」に懐疑的な見方、健康リスクへの懸念広がる
これは過去30年以上にわたってこれらの製品が税金の対象外だった状況を改めるもので、出生率低下への対策として実施される。しかし、この「コンドーム税」は国内外で批判や懸念を招いている。
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中国政府が2026年1月1日から避妊具・避妊薬などの「避妊関連製品」に13%の付加価値税(VAT)を課す新たな税制措置を導入することを決定した。
これは過去30年以上にわたってこれらの製品が税金の対象外だった状況を改めるもので、出生率低下への対策として実施される。しかし、この「コンドーム税」は国内外で批判や懸念を招いている。
政府当局はこの課税について、他の商品と同様の扱いに戻すものであり、避妊具の価格が上昇することは市場の正常化につながるとの見解を示す。一方で中国の出生率は急激に低下しており、2019年の1470万人に対し2024年は950万人にとどまるなど減少傾向が続いている。死亡者数が出生数を上回る状態となり、2023年にはインドが中国の人口を抜いた。
中国のソーシャルメディアでは新税が話題となり、多くのユーザーが子育て費用がコンドーム税よりはるかに高いことを指摘して嘲笑する声も広がった。強制的な一人っ子政策が約35年間続いた過去を持つ中国では、避妊具が簡単に利用可能で無料だった時代もあり、今回の政策は矛盾しているとの批判も出ている。
専門家は避妊具への税導入が実際に出生率を押し上げる効果は限定的だと指摘する。子どもを望まないカップルにとって13%の税率は避妊の選択に大きな影響を与えず、むしろ育児費用の高さが出生意欲に影響しているという意見がある。
懸念は公衆衛生の面にも及んでいる。避妊具の価格上昇は経済的に余裕のない層の避妊へのアクセスを困難にし、望まれない妊娠や性感染症(STI)のリスクを高める可能性が指摘されている。中国における避妊具の利用率は低く、統計によると、カップルの約9%しかコンドームを使用していない。
中国では過去に年間900万から1000万件以上の中絶が報告されており、実際の数字はさらに多い可能性があるとみられる。また、性感染症の患者数も増加傾向にあり、2024年には淋菌感染者が10万人以上、梅毒患者は67万人以上と報告された。HIV/AIDS感染者も増加しており、140万人に上るとされる。これらの状況を踏まえると、避妊への経済的障壁が健康リスクを増幅させるとの懸念が強まっている。
市民の間には当局による個人の生殖選択への介入との受け止め方もある。かつて強制中絶や罰金などの厳格な人口抑制政策が実施されてきた歴史が背景にあり、今回の税制変更は女性の身体や性行動への管理とみなす意見もある。
一方で新税を支持する専門家は、避妊関連商品を他の商品と同じ市場原理で扱うことは「合理的」との見解を示すが、出生率改善への寄与は限定的との分析もある。政府は今後、新税が社会全体に与える影響を見極める必要に迫られるだろう。
新税導入により中国の出生政策と公衆衛生に関する議論はさらに活発化するとみられ、専門家や市民の間でその効果とリスクについての見解が分かれている。
