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鉱夫から飲食業界に転身する人も、中国の「石炭の都」


大同は中国有数の石炭生産地として知られ、山西省全体では約80万人の鉱山労働者が2025年に13億トンもの石炭を採掘し、中国全体の約3分の1を担った。
2026年3月13日/中国、山西省大同の旧鉱山入り口(AP通信)

中国北部・山西省大同市では、長年にわたり石炭産業が地域経済と人々の生活を支えてきた。しかし近年、中央政府が再生可能エネルギーへの転換を加速させる中で、この「石炭の都」は大きな変化に直面している。炭鉱で働いてきた労働者たちは、産業構造の転換の波の中で新たな生き方を模索せざるを得なくなっている。

大同は中国有数の石炭生産地として知られ、山西省全体では約80万人の鉱山労働者が2025年に13億トンもの石炭を採掘し、中国全体の約3分の1を担った。関連産業も含めれば数百万人が石炭産業で働いている。こうした背景から、石炭は単なるエネルギー資源ではなく、地域社会そのものを形成してきた。

しかし、中国では風力や太陽光などの再生可能エネルギーが急速に拡大し、近年の電力需要の増加分のほとんどを担うまでになっている。その結果、石炭産業は相対的に重要性が低下し、炭鉱の縮小や閉鎖も進み始めている。こうした変化は炭鉱労働者の雇用や地域経済に直接的な影響を及ぼしている。

AP通信の取材に応じた60歳の元鉱夫は引退後、観光客向けに羊肉串を販売する飲食店を開いた。世界遺産・雲崗石窟を訪れる観光客の増加を背景に、新たな収入源を得ることに成功した数少ない例である。しかし、このように円滑に転職できる労働者は少数にとどまる。多くの労働者は他の職業に必要な技能を持たず、「炭鉱以外に何ができるのか分からない」と不安を抱えている。

かつて炭鉱企業は住宅や学校、娯楽施設を備えたコミュニティを形成し、地域は活気に満ちていた。しかし現在では、閉鎖された学校や空き家が目立ち、人口減少と高齢化が進んでいる。炭鉱の一部は博物館として保存されているものの、かつての繁栄は失われつつある。

政府は観光業や新エネルギー産業の育成によって地域経済の転換を図っている。特に観光は有力な代替産業で、ゲーム作品の影響などにより観光客が増加している。しかし、観光業の恩恵が全ての労働者に行き渡るとは限らず、ホテルや一部の店舗に利益が集中するとの懸念もある。また、観光ガイドになるには資格試験が必要で、誰もが容易に参入できるわけではない。

さらに、中国において石炭は依然としてエネルギー安全保障の要であり、完全な脱却は現実的ではない。実際、政府は新たな石炭火力発電所の建設も続けており、再生可能エネルギーと石炭が併存する過渡期にある。このため、炭鉱の需要が急激に消滅するわけではないが、鉱山の枯渇や再配置によって労働環境は不安定化している。

一部の労働者は副業として配車サービスの運転手を務めるなど、複数の仕事を掛け持ちして収入を補っている。それでも将来への不安は根強く、「新しい産業の恩恵を受けられるのは一部だけではないか」という疑念が広がっている。

このように、中国のエネルギー転換は環境対策として不可避である一方、地域社会に深刻な影響を及ぼしている。専門家は労働者が取り残されない「公正な移行(ジャスト・トランジション)」の重要性を指摘する。炭鉱労働者が新たな技能を習得し、持続可能な産業に移行できるかどうかが、今後の地域の安定と発展を左右する鍵となる。

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