中国の低コストな生活様式「ゴーストタウン」で暮らす人々
共産党指導部は不動産市場の安定化を図るため様々な施策を導入しているが、過剰供給問題や地方の不動産調整はほとんど進まず、解消には程遠い状態だ。
.jpg)
中国東部沿岸の広大な住宅開発地帯に建設された大規模住宅複合施設が、かつての不動産バブル崩壊の象徴として今なお半ば放棄された状態で存在し、その中で低コストの新しい生活スタイルが広がっている。これらの様子を捉えたAP通信の写真が現地の状況を物語っている。
この複合施設の代表例が「Life in Venice(ライフ・イン・ベニス)」である。上海の商業中心部から車で約1時間半の距離に位置し、イタリアのベニスを模した運河や橋、彫像などを備えたリゾート風の高級住宅団地として宣伝されていたが、数年前から不動産価格が下落し、開発最大手の恒大集団が2024年に破産したことで大半の住戸が売れ残る「ゴーストタウン」と化している。
この団地は事実上放棄され、海辺に面したホテルや施設も閑散とし、かつての繁栄の面影は薄れている。石造の噴水は水を失い、空き家や使われなくなった桟橋が寂れた風景を形づくっている。住宅価格はピーク時の半値以下に落ち込み、3ベッドルームのアパートでも月額わずか800元(約1万8000円)で貸し出されることがあるという。
こうした格安価格は北京や上海などの大都市での生活費や競争の激しさから逃れたいと考える人々を引きつけている。都市部の暮らしに疲れた若者や低所得者がここに移住し、安価でのんびりとした生活を求める動きが見られる。複合施設内にはわずかながら食料品店やレストラン、物流ステーションなどが営業し、住民の日常生活を支えている。
冬季には特に静けさが際立ち、住民が外で子どもの洗濯物を干し、釣りを楽しむ姿や、閑散とした海岸のブランコに1人でたたずむ人の姿が写真に捉えられている。高級住宅街になるはずだった空間は、むしろ日常生活の場として静かな存在感を示している。
この現象は中国全土のいくつかの地域で見られ、不動産不況を象徴するものと受け止められている。過剰な供給と投資熱の冷え込みにより、多くの大型住宅開発プロジェクトが未完成あるいは低稼働のまま残されている。国内の不動産価格全体の低迷も続き、銀行の不良債権増加など金融リスクが懸念されているとの報告もある。
一方で、こうした複合施設の存在が新たな生活モデルを生んでいるとの見方もある。低コストで住める住宅として再利用され、都市圏から離れた地域に新たなコミュニティが形成されつつある。高額な住宅ローンに苦しむ都市住民にとって、こうした場所は「ゆっくりとした生活」や「スローライフ」を実現する場として注目されている。
共産党指導部は不動産市場の安定化を図るため様々な施策を導入しているが、過剰供給問題や地方の不動産調整はほとんど進まず、解消には程遠い状態だ。こうした取り組みと並行して、放棄された大型住宅地域の活性化策や住民ニーズに応じた再利用方策が今後の焦点となる可能性がある。
