◎北京2022冬季五輪は来年2月4日に開幕する予定。
2020年1月21日/オーストラリア、メルボルンで開催された全豪オープンテニス選手権、中国の彭帥(ポン・シュアイ)選手(Getty Images/AFP通信)

11月22日、女子テニス協会(WTA)は国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長と中国の彭帥(ポン・シュアイ)選手がオンラインで対話したことについて、「問題は解決していない」と懸念を表明した。

2カ月半後に開幕する北京2022冬季五輪を主催するバッハ会長は21日、中国共産党の最高幹部に性的暴行を受けたと告白した彭帥 選手とオンラインで対話し、国際社会の懸念をある程度払拭した。

WTAツアーで24勝を挙げている彭帥 選手は今月、共産党の政治局常任委員会のメンバー兼元副首相である張高麗(ちょうこうれい)氏から7年前に性的暴行を受け、3年前にはテニスの試合後に繰り返し関係を強要されたと告白し、行方不明になった。

失踪事件は広範な懸念を引き起こし、米国、国連、世界のスポーツ選手、テニス協会が彭帥 選手と家族の安全を保障し、その証拠を提供するよう中国共産党に求めた。

IOCは五輪に3度出場した彭帥 選手の失踪に対する声明をなかなか発表せず批判を浴びたが、21日のオンライン対話で批判をある程度かわすことに成功した。

IOCは声明の中で、「彭帥 選手はIOCに謝意を示したうえで、プライバシーを尊重してほしいとバッハ会長にお願いしました」と述べた。

しかし、WTAはIOCが公開した写真と中国メディアの動画について、「彭帥 選手は発言を強要されている可能性がある」と述べ、「これで問題が解決したとは思わない」と強調した。

スポーツ選手の権利団体であるグローバルアスリートも失踪事件に対するIOCの「共産党寄りのアプローチ」を批判した。「IOCは彭帥 選手の性的暴行の申し立てと2週間以上の失踪をうやむやにし、基本的人権と正義を尊重しない中国当局に加担しました」

陸上競技の国際競技連盟ワールドアスレティックスのセバスチャン・コー会長は英BBCニュースのインタビューの中で、「彭帥 選手の問題はバッハ会長の静かな外交で解消された」と痛烈に皮肉った。

IOCは声明の中で、「バッハ会長は来年1月の北京訪問後に予定されている夕食会に彭帥 選手を誘うと提案し、快諾を得た」と述べ、北京2022の準備は順調に進んでいるとさりげなくアピールした。

バッハ会長と彭帥 選手の対話は懸念をある程度払拭したと信じられているが、ソーシャルメディアには否定的な意見が相次いで寄せられた。ある女性ユーザーは、「彭帥は銃を突き付けられている」と投稿し、別のユーザーは「家族を人質に取られている可能性が高い」と主張した。

ニューヨークで活動する人権活動家のクリスタル・チェン氏は21日、彭帥 選手をサポートするイベントを主催した。チェン氏はBBCニュースに、「公開された写真と映像は彭帥 選手を無傷に見せかけている」と指摘した。

IOCは年間収入の73%を放映権、18%をスポンサーから得ており、2014年に米NBCと五輪放映権を2032年まで延長する契約を結んだ。契約料は76.5億ドル(約7,900億円)。NBCの契約料はIOCの年間収入の約40%を占めている。

共産党の弾圧に直面しているウイグル族、チベット族、その他の少数民族、そして香港の国民を支援する主要な人権団体はIOC、スポンサー、各国のスポーツ連盟に大会から完全撤退するよう圧力をかけており、北京2022を「ジェノサイド(大量虐殺)オリンピック」と呼んだ。

2021年11月21日/IOCのトーマス・バッハ会長は中国の彭帥(ポン・シュアイ)選手はオンラインで約30分話した(Getty Images/AFP通信/IOC/Greg Martin)
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