◎全国人民代表大会(NPC)は香港の親建制派の委員会に議員の任命権を与え、有権者によって選ばれる議員の数を減らすことに合意した。
3月11日、全国人民代表大会(NPC)は、香港の選挙制度を見直す法案を全会一致で承認した。中国の最高議会にあたるNPC常任委員会がこれを承認すれば、香港の市民の権利は大きく損なわれることになる。
これにより、香港の民主主義を要求する活動家たちはさらに厳しい状況に追いやられた。共産党指導部は1997年の香港返還における自治権の約束を踏みにじり、世界の金融センターと呼ばれた香港の地位は大きく傷ついている。
共産党指導部の香港に対する取り締まりの強化は、欧米との関係をさらに悪化させる可能性が高い。
NPCは香港の親建制派の委員会に議員の任命権を与え、有権者によって選ばれる議員の数を減らすことに合意した。投票結果は賛成2,895ー反対0(棄権1)。なお、NPCのメンバーは共産党指導部に忠誠を誓っており、全会一致が慣習になっている。
またNPCは、指導部が示した今後5年間の新たな開発計画を全会一致で可決した。指導部は中国をより自立した技術創造者に変え、経済のさらなる強化を目論んでおり、米中の緊張を高める可能性がある。
習近平 国家主席はコロナウイルス、南シナ海における対立、スパイ行為や技術の盗難の告発をめぐって、アメリカやオーストラリアなどと積極的に貿易戦争を繰り広げており、国内の問題に焦点を当てているNPCの存在はますます薄くなっている。なお、NPCの投票はただの儀式であり、決裁権限はNPC常任委員会が独占している。
一方、李克強 首相は11日の記者会見の中で、2021年の経済成長率は6%以上、少なくとも8%は達成したいと述べ、予報官を驚かせた。
中国は2020年にプラス成長を達成したが、アメリカや日本などの主要経済国はコロナウイルスに苦しめられた。中国の2020年第4四半期の経済成長率は前年同期比プラス6.5%だった。
法案が成立すれば、「1,500人のメンバーで構成される選挙委員会」が香港の指導者および議員を選ぶことになる。
委員会のメンバーは、ビジネス関係者や政治家を含む社会の5つの部門から選抜される。地元メディアによると、委員会は特別行政区立法会(LegCo)の議員の3分の1を選ぶ「予定」だという。
李克強 首相は「香港を支配する愛国者の雄姿を見たい」と述べ、新しい法律は中国の安全保障を保護し、繁栄と安定に貢献するだろうと強調した。
イギリスのドミニク・ラープ外相は声明で、「法案の承認は独立時の約束に反する行為。国際社会の主要メンバーとして、国際的な責任と法的義務を果たしている中国の信頼をさらに損なう可能性がある」と非難した。
アントニー・ブリンケン国務長官もNPCの決定を「香港の憲法である基本法に対する直接攻撃」と非難した。
ブリンケン国務長官は声明の中で、「法案は香港の市民の政治参加を制限し、民主的な代表を減らし、政治的議論を抑圧するものであり、完全に容認できない」と述べた。
一方、香港のリーダーである林鄭 月娥(りんてい げつが)行政長官はNPCの決定を歓迎し、次のように述べた。
「新しい法律はLegCoの問題を解決し、香港を引き裂いた無謀な動きや内部の亀裂に効果的に機能するでしょう」
NPCは昨年、香港の民主活動家を打ち負かす国家安全維持法を承認した。これにより、47人の元議員や民主活動家たちは終身刑を含む厳しいペナルティに直面している。
元香港議員のエミリー・ラウ氏はAP通信のインタビューの中で、「香港の市民は権利を剥奪されました」と述べた。
「共産党指導部は非常に厳格な管理を行いたいと考えています。それは民主主義ではありません」
「香港の市民は独立や政府の転覆を願っているわけではありません。共産党指導部がすべきことは、香港の市民の声に耳を傾け、対話の場を設けることです。私たちに襲いかかるのではなく、前進する方法について話し合うべきです」