カンボジア・タイ国境で銃撃戦、1人死亡、3人負傷、緊張高まる
両国は7月、国境沿いで5日間に渡って衝突。空爆・砲撃の応酬となり、30人以上が死亡、26万人以上が避難を余儀なくされた。
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カンボジア政府は12日、タイ国境沿いの地域でタイ軍兵士が発砲し、民間人1人が死亡、3人が負傷したと発表した。
両国の国境付近では9日、地雷が爆発し、タイ軍兵士2人が重傷を負ったばかりである。
両国は先月、マレーシアで開催されたASEANサミットで停戦協定に署名した。
両国は7月、国境沿いで5日間に渡って衝突。空爆・砲撃の応酬となり、30人以上が死亡、26万人以上が避難を余儀なくされた。
両国はその後、米国やマレーシアなどの仲介で無条件の停戦に合意。7月29日に発効した。
しかし、その後も緊張はくすぶり続け、衝突の前後を含め、地雷爆発が相次いでいる。8月には国境地帯をパトロール中のタイ兵士3人が負傷する事件も発生した。
タイは9日の地雷爆発について、カンボジア側に謝罪を要求。停戦協定の履行を停止すると発表した。
トランプ(Donald Trump)大統領は両国が戦闘を停止しない場合、輸入関税を引き上げ、関税交渉には一切応じないと警告していた。
タイのチャーンウィーラクン(Anutin Charnvirakul)首相は11日、国境地帯を訪れ前線部隊を視察。記者団に対し「タイは一貫して停戦合意の履行に努めてきたが、カンボジア側が協定を無視したため、我々も履行を停止した」と語った。
カンボジアのフン・マネット(Hun Manet)首相は12日、テレグラムに声明を投稿。タイ軍兵士が北西部の国境近くに居住する一般市民に向けて発砲し、民間人1人が死亡、3人が負傷したと説明した。
またフン・マネット氏は「この攻撃は、タイ軍が対立を扇動する目的で何日にもわたって数多くの挑発的な行動を行った後に発生した」と主張。「カンボジアは依然として停戦を履行している」と付け加えた。
タイ軍はこの主張に反発。「先に発砲したのはカンボジア側であり、タイ軍兵士は交戦規則に従って身を隠し、それに応じて警告射撃を行った」と主張した。
タイ軍によると、銃撃戦は10分ほど続いたという。タイ側で死傷者は報告されていない。
タイとカンボジア間の「国境係争地」の問題は歴史的経緯、民族感情、そして政治的思惑が複雑に絡み合っている。
特に象徴的なのが、カンボジア北部プレアビヒア寺院(Preah Vihear Temple)周辺の領有権をめぐる対立である。
この寺院は11世紀にクメール王朝によって建立されたヒンズー教の聖地であり、文化的にも歴史的にも大きな価値を持つ。
寺院自体はカンボジア領内に位置すると国際司法裁判所(ICJ)が1962年に判断したが、その周辺の丘陵地や出入り口にあたる土地については明確な画定がなされず、国境線の解釈をめぐって緊張が続いてきた。
