SHARE:

カンボジア政府、オンライン詐欺対策用の法案を閣議決定


カンボジアは近年、オンライン詐欺の国際的な拠点の一つと指摘されてきた。
2026年3月11日/カンボジア、首都プノンペンの詐欺拠点を捜索する警察関係者(AP通信)

カンボジア政府は国内で横行するオンライン詐欺拠点を取り締まるため、同国で初めてとなる専用の法律案を起草・閣議決定した。政府はオンライン詐欺の拠点を4月末までに全て閉鎖する方針を掲げており、その取り締まりを強化するための法的枠組みを整備する狙いがある。

カンボジアは近年、オンライン詐欺の国際的な拠点の一つと指摘されてきた。投資話を装った詐欺や恋愛感情を利用したロマンス詐欺などが多く、世界各地の被害者から金銭をだまし取る犯罪が横行している。こうした詐欺による被害額は世界全体で年間数百億ドル規模に上ると推計されている。

さらに問題視されているのが、人身売買と結びついた労働搾取である。多くの外国人が「高収入の仕事」などと偽った求人で誘い込まれ、詐欺拠点に閉じ込められて働かされるケースが報告されている。被害者の多くはアジア各国出身で、逃亡を試みた際に暴力を受けたり、拘束されたりする例もあるとされる。

政府が閣議で承認した法案では、オンライン詐欺拠点の運営や指揮を行った場合、5年から10年の禁錮刑と5億~10億リエル(2000万~4000万円)の罰金を科すと定めている。また、人身売買や暴力、監禁などが伴う場合は10年から20年の禁錮刑と最大20億リエル(約6000万円)の罰金が科される。さらに、詐欺拠点に関連して死者が出た場合には15年から30年の禁錮刑、または終身刑が科される可能性もある。

首相府の報道官はX(旧ツイッター)への投稿で、この法律はオンライン詐欺やマネーロンダリングと戦うための「最も重要な法的手段になる」と強調し、カンボジアが犯罪者の避難先ではないことを示す狙いがあると説明した。また、詐欺問題によって損なわれてきた国の評判や経済への影響を回復する必要があると述べた。

政府による取り締まりはすでに進められている。オンライン詐欺対策委員会の責任者であるチャイ・シナリット(Chhay Sinarith)氏によると、当局は昨年7月以降、詐欺拠点とみられる約250カ所を捜索し、そのうち約200カ所を閉鎖した。また、これまでに79件の事件で約700人が立件されている。

さらに、詐欺拠点で働かされていた外国人の保護も進められ、23カ国出身の約1万人が帰国支援を受けた。まだ帰国待ちの人もいるほか、自力で脱出して帰国したケースもあるという。

専門家の間では、法律制定だけで問題が解決するかどうかに懐疑的な見方もある。これまでにも当局による摘発が行われてきたものの、資金洗浄や犯罪組織のネットワークが残る限り、拠点が別の場所で再び活動を始める可能性があると指摘されている。

今回の法案は今後、国会の承認を経て施行される見通しで、カンボジアのサイバー犯罪対策は新たな段階に入ることになる。政府は国際社会との協力も進めながら、急速に拡大したオンライン詐欺産業の根絶を目指す考えである。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします