◎軍を率いるミン・アウン・フライン司令官は、昨年11月の選挙でスーチー氏の国民民主連盟(NLD)が不正を働いたと非難し、非常事態を宣言したうえで、最高指導者に就任した。
◎ホワイトハウスは声明の中で、「アメリカは民主化を進展させたミャンマーに対する制裁を段階的に撤廃した。しかし、軍事政権が即時の見直しとそれに続く適切な対応を取らなければ、撤廃のプロセスは逆転するだろう」と警告した。
2月1日、ジョー・バイデン大統領はミャンマー軍による権力の掌握と一連の行動を非難し、軍事政権に対する制裁を復活させると圧力をかけた。
アメリカは軍事独裁政権から民主化への道を進んだミャンマーに対する制裁をつい最近撤廃した。
ミャンマーの民主主義の英雄と呼ばれるアウンサンスーチー氏と他の政府高官は、2月1日早朝に発生したクーデターで拘束された。
軍を率いるミン・アウン・フライン司令官は、昨年11月の選挙でスーチー氏の国民民主連盟(NLD)が不正を働いたと非難し、非常事態を宣言したうえで、最高指導者に就任した。
これに対しバイデン政権は、オバマ政権時代に解除した制裁を復活させると示唆し、スーチー氏と政府高官の速やかな解放と適切な処置をとるよう警告した。
国務省の当局者はABCニュースの取材に対し、「現在、事実確認と分析を行っている。結果を精査したうえで、ミャンマーの対応を待つ」と述べた。
国務省は事実確認のタイムラインを明らかにしていない。なお、報道によると、ミン・アウン・フライン最高指導者は1年以内に再選挙を行い、軍事政権の地盤固めをする可能性があると伝えられている。
スーチー氏のNLDは昨年11月の議会選挙で圧勝し、軍の支援を受けた野党は惨敗した。
軍は投票者リストの名前の重複などで数百万票が捏造されたと主張したが、選挙委員会はこの意見を1月28日に却下している。
ライン最高指導者は権力の移行を「憲法で保障された正当な行為」と述べたが、NLDはそれを軍事クーデターと非難した。
ただし、バイデン政権は状況を精査しており、まだ軍事クーデターと断定していない。
合衆国憲法は、軍隊が正式に選出された政府を転覆させた場合、または転覆の役割を果たした場合、国への対外援助を制限してきた。これには経済援助や軍事援助が含まれるが、特定の目的(民主化、麻薬密売対策、テロ対策など)を促進するための資金は免除される。
ホワイトハウスは声明の中で、「アメリカは民主化を進展させたミャンマーに対する制裁を段階的に撤廃した。しかし、軍事政権が即時の見直しとそれに続く適切な対応を取らなければ、撤廃のプロセスは逆転するだろう」と警告した。
ミャンマーの経済は昨年のパンデミックと経済崩壊に打ちのめされ、数百万人が貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。
全米民主化国際研究所のデレク・ミッチェル会長はABCニュースの取材に対し、「重要なことは、ミャンマーの市民を傷つけずに制裁を科すことです。市民はすでにひどく傷ついています。影響を受けるのは軍隊だけでなければいけません」と述べた。
デレク・ミッチェル会長:
「しかし、アメリカにできることは限られています。2017年のロヒンギャに対する暴力の開始以来、アメリカはミャンマーにほとんど関与しませんでした」
ミッチェル会長は2012年から2016年までミャンマーの米国大使を務めていた。
ミャンマー北西部、イスラム教徒の少数民族であるロヒンギャは、何十年にも渡る迫害と暴力的な抑圧に苦しめられてきた。
2017年8月、ミャンマー軍はミン・アウン・フライン司令官(当時)の指揮の下、ロヒンギャを自宅から追い出し、数千人を殺害し、女性をレイプし、村を焼き、土地を奪った。
国連は当時、「ロヒンギャの市民に対する行為は、大量虐殺と人道に対する罪として調査されるべきだ」と述べた。この訴訟は現在、ハーグの国際司法裁判所(IOJ)で係属中である。
アントニー・ブリンケン国務長官は先月、トランプ政権時代の「民族浄化宣言」を「大量虐殺宣言」に変更する可能性があると述べた。
ノーベル平和賞を受賞したアウンサンスーチー氏はロヒンギャに対する軍の攻撃を擁護し、時には国内のイスラム過激派との戦争の一環として大量虐殺を正当化したため、民主主義の象徴しての同氏の評判は大きく損なわれた。
バイデン大統領は声明の中で、「アウンサンスーチー氏と政府高官の拘留および非常事態の宣言は、ミャンマーの民主化への移行と法の支配に対する攻撃である」と述べた。
ジョー・バイデン大統領:
「国際社会は一丸となってミャンマー軍に圧力をかけ、掌握した権力の放棄、拘束した政治家、活動家、当局者の解放、通信制限の解除、そして民間人に対する暴力を控えるよう促さなければならない」
「アメリカは困難な状況に直面している市民の側に立っている。アメリカは地域および世界中のパートナーと協力して民主主義と法の支配の回復を支援し、ミャンマーの民主化への移行を覆す者に責任を負わせる」