バングラデシュで「デング熱」蔓延、子供の感染急増
デング熱は蚊を媒介として広がるウイルス性感染症であり、世界の熱帯・亜熱帯地域を中心に深刻な公衆衛生問題となっている。
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バングラデシュ全土でデング熱感染が急増している。
保健当局は21日、今年最大の1日当たりの死亡者数と入院患者数を報告した。
それによると、過去24時間で12人が死亡、新たに740人の患者が入院した。
今年に入ってこれまでに、デング熱による死者は少なくとも179人に上り、全国で約4万2000人が感染している。
現地メディアによると、小児患者の入院が急増しており、高熱・発疹・脱水症状で緊急搬送されるケースが増えているという。重篤な合併症を発症する例も見られる。
ロイター通信の取材に応じた医師は「小児は急速な体液喪失やショック状態に陥りやすく、デング熱は極めて危険だ」と指摘。発熱や歯茎からの出血といった初期症状を見逃さないよう保護者に呼びかけた。
デング熱は蚊を媒介として広がるウイルス性感染症であり、世界の熱帯・亜熱帯地域を中心に深刻な公衆衛生問題となっている。原因となるのはフラビウイルス科のデングウイルスで、血清型は4種類存在する(DEN-1からDEN-4)。一度感染しても他の型に感染する可能性があり、2回目以降の感染では「重症化リスク」が高まるのが特徴である。
主な媒介はネッタイシマカやヒトスジシマカといった蚊で、人から人へ直接感染することはない。感染者の血液中にウイルスが存在する期間に蚊が吸血すると、その蚊が別の人を刺すことで感染が広がる。潜伏期は3~7日程度で、発症すると突然の高熱、激しい頭痛、眼の奥の痛み、筋肉や関節の痛み、発疹などが現れる。こうした症状のため「骨折り熱」と呼ばれることもある。通常は1週間ほどで回復するが、一部の患者はデング出血熱やデングショック症候群に進展し、血小板減少や出血傾向、循環不全を伴って致死的になる可能性がある。
世界保健機関(WHO)のデータによると、近年デング熱の発生件数は急増しており、年間で推定3億9000万人が感染、そのうち症状を呈するのは約9600万人とされる。特に東南アジアやラテンアメリカでの流行が顕著であり、都市化や地球温暖化によって蚊の生息範囲が広がり、感染リスクはさらに拡大している。
治療法としては特効薬は存在せず、対症療法が中心である。解熱剤や輸液療法により症状を和らげ、重症化を防ぐことが主眼となる。ただしアスピリンやNSAIDsは出血リスクを高めるため使用は避けるべきとされる。ワクチンについては「デングワクチン(Dengvaxia)」が一部で承認されているが、既感染者に限り有効で、未感染者に接種すると重症化のリスクを高める可能性が指摘されているため、普及は限定的である。
デング熱対策の基本は蚊の発生源対策である。水たまりの除去や殺虫剤の散布、蚊帳や虫よけの使用が推奨される。気候変動や都市の過密化によって今後も感染拡大が懸念される中、国際的な協力による蚊の制御や新しいワクチン開発が急務とされている。