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バングラ活動家殺害、首都ダッカで追悼式、数十万人参列、緊張高まる中

政府は反旗を掲げ、この日を国家的な哀悼の日と定めた。
2025年12月20日/バングラデシュ、首都ダッカで行われた活動家の葬儀(AP通信)

バングラデシュの首都ダッカで20日、銃撃を受けて死亡した著名な活動家の追悼式が行われ、数十万人が参列した。

追悼式は国会議事堂前の広場で執り行われた。政府は反旗を掲げ、この日を国家的な哀悼の日と定めた。犠牲者となったのは著名な活動家シャリフ・オスマン・ハディ(Sharif Osman Hadi、32歳)氏。12月12日、ダッカ中心部で銃撃され負傷し、その後シンガポールの病院で治療を受けていたが、18日に亡くなった。

ハディ氏は来年2月に予定されている議会選挙に独立候補として出馬する意向を示していた。

ハディ氏の殺害は暫定政権への不信や不満を増幅させ、抗議デモや暴動を引き起こした。その死が発表された直後、群衆は怒りに駆られ、国内有力紙の社屋を襲撃・放火して印刷設備を破壊するなど生した。これらのメディアは政治的立場をめぐって批判の的となっており、記者やスタッフが一時建物内に閉じ込められる事態となった。

警察当局は容疑者を特定したと発表、この人物はインドに逃亡した可能性が高いとみられている。この報道を受けて、政府が駐インド大使を召還する一方、インド側もバングラ大使を呼び出すなど、外交面での緊張も高まっている。ハディ氏はインドと暫定政権を鋭く批判していたことから、事件は両国間の政治対立をさらに深刻化させている。

群衆は追悼式で国旗を掲げ、「ハディの血を無駄にしない」といったスローガンを唱え、彼の理念を継承する決意を示した。ハディ氏の遺体はダッカ大学キャンパス内にある墓地に埋葬された。

暫定政権を率いるノーベル平和賞受賞者のユヌス(Muhammad Yunus)首席顧問は演説で、市民に対し冷静な対応を呼びかけるとともに、ハディ氏の死を「政治と民主主義にとって取り返しのつかない損失」と評し、その遺志を引き継ぐことを誓った。

暫定政権は昨年8月の蜂起後に発足し、ハシナ(Sheikh Hasina)前首相がインドに逃れた後の政治再建に取り組んでいるが、依然として国内の分断と暴力を抑えることに苦慮している。

バングラでは昨年の学生蜂起がハシナ政権を崩壊させた後も政治的混乱が続いており、今回の事件は来年の選挙に向けた不安材料となっている。ハシナ氏は特別法廷で死刑判決を受けており、主要政党の復権をめぐる対立やイスラム系政党の動きも含めて複雑な政治状況が続いている。今回の追悼式と抗議活動はバングラ社会に深く根ざした不満と不安がいまだに解消されていないことを示している。

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