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バングラデシュでヒンズー教徒への暴力急増、総選挙控える中

ヒンズー教徒はバングラの全人口約1億7000万人の8%に当たる約1310万人、91%がイスラム教徒である。
2026年1月9日/バングラデシュ、首都ダッカ近郊(AP通信)

バングラデシュで2月12日の総選挙を控える中、同国のヒンズー教徒を中心とする少数派コミュニティに対する暴力やヘイトが急増し、人々の間に深刻な不安が広がっている。昨年12月には22歳の男性が同僚らからイスラム教の預言者ムハンマドへの不敬を理由に襲われて死亡、遺体が木に吊るされ焼かれるという残虐な事件が発生した。これを受けて首都ダッカなど各地で抗議行動が起きた。

ヒンズー教徒はバングラの全人口約1億7000万人の8%に当たる約1310万人、91%がイスラム教徒である。人権団体は2024年8月にハシナ政権が退陣した後、暴力事件が急増していると報告している。その記録によると、殺人61件、女性に対する暴力28件(レイプや集団暴行を含む)、礼拝所への攻撃・略奪・放火など95件を含む2000件以上の宗教対立に起因する暴力事件が確認されている。人権団体はユヌス暫定政権がこうした暴力報告を軽視または否定していると非難している。

ヒンズー系の人権団体は「誰も安全を感じられない。みんな恐怖におののいている」と述べ、暴力が日常化しつつあるとの懸念を示している。選挙が迫る中、多くのヒンズー教徒は自分たちが標的にされるのではないかとの不安を抱えている。過去の選挙でも宗教的少数派への攻撃が増加する傾向があり、今回も投票参加を思いとどまらせる要因になるとの見方が出ている。

暴力の背景にはイスラム原理主義ジャマート・イ・イスラミ党の勢力回復があるとの指摘がある。ハシナ政権下で長年にわたり抑圧されていた同党とその学生組織は、今回の選挙を機に政治的影響力を取り戻そうとしており、ヒンズー教徒の候補者を擁立するなど表面的には包摂を図っている。しかし政治アナリストはこうした動きを「象徴的なものにすぎない」と評し、他の主要政党が少数派の代表を十分に擁立していないことも指摘している。

政府側は暴力と差別に対し必要な対応をしていると主張しているが、少数派側には制度的な不十分さや免責の文化が広がっているとの批判が根強い。特に暴力行為に関与した者が法的に追及されない事例が多いとして、被害者コミュニティの間では「暴力が続く」という印象が強まっている。

この状況はバングラと隣国インドとの関係にも影を落としている。インド政府はバングラでの少数派ヒンズー教徒への攻撃について強い懸念を表明し、これを巡って外交的な応酬や抗議行動、スポーツ競技のボイコットなどが発生している。バングラ政府はこうした批判を「反バングラ感情を煽る試み」と批判しているが、地域情勢への影響は無視できないものとなっている。

選挙が近づく中で宗教的少数派の安全と権利保護がどのように確保されるかは、バングラの民主的プロセスと社会の安定性を測る重要な試金石となっている。

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