豪ニューサウスウェールズ州、過激主義を象徴する旗やスローガン禁じる法案提出へ
これは過激派組織「イスラム国(ISIS)」に影響を受けたとみられるテロ事件を受けて、地域社会における憎悪表現や暴力扇動の芽を徹底的に摘む狙いがある。
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オーストラリア・ニューサウスウェールズ州(NSW)がシドニーのボンダイビーチで発生した銃乱射事件を受けて、過激主義を象徴する旗やスローガンの公共掲示をより厳しく取り締まる法案を州議会に提出する予定である。
これは過激派組織「イスラム国(ISIS)」に影響を受けたとみられるテロ事件を受けて、地域社会における憎悪表現や暴力扇動の芽を徹底的に摘む狙いがある。
州政府が導入を目指す法案では、ISIS旗やその他の過激派組織のシンボルを公共の場で掲げる行為を禁じ、違反者には2年以下の禁錮刑や罰金を科すことを盛り込んでいる。これらの規制は過激思想の宣伝や扇動を防止するための措置として位置づけられており、法案審議は州議会で近日中に始まる見通しだ。
NSWのミンズ(Chris Minns)州首相は20日、抗議デモの場で「グローバライズ・ジ・インティファーダ(globalize the intifada)」といったフレーズの使用も禁止対象とする意向を示した。
この言葉は直訳すると「インティファーダ(蜂起)を世界化せよ」となり、ガザ紛争に関連する抗議で使われることがある。一部の親パレスチナ派デモ参加者はこれを戦争に反対するスローガンと主張する一方、ユダヤ人コミュニティの指導者らは暴力を助長する表現だと強く批判している。ミンズ氏は「憎悪や憎悪煽動のスピーチはオーストラリアに居場所がない」と述べ、こうした表現が地域の安全や調和に脅威を及ぼすとの認識を示した。
同法案は警察の権限も強化する内容となっており、デモなどの際に容疑がある人物に対し、顔を隠す覆面の除去を命じる権限を付与することが含まれている。このような措置は憎悪犯罪の予防や公共の安全確保を目的としているが、表現の自由や市民の権利とのバランスを巡って議論を呼ぶ可能性がある。
この動きはボンダイビーチでの事件がオーストラリア社会に衝撃を与えた背景の中で進んでいる。警察によると、銃撃はユダヤ教の祭日ハヌカの祝典を狙ったテロ攻撃であり、容疑者の車両からはISIS旗が見つかっている。事件では15人が死亡し、多数が負傷したほか、容疑者1人が射殺され、もう1人が多数の罪状で拘束されている。
アルバニージー(Anthony Albanese)首相もラジカル化や憎悪の拡大に対抗するためのより広範な対策を進める考えを表明している。同氏は憎悪表現や暴力扇動を促す者への法的措置を強化し、オンライン上の脅迫や嫌がらせに対する罰則の厳格化、特定の団体を「憎悪団体」と指定する仕組みの導入などを検討する意向を示した。さらに、銃規制をさらに強化する計画も発表している。
一方で、こうした法案や権限強化に対しては、表現の自由や抗議活動の権利への影響を懸念する声もある。法案は今後州議会での審議を経て成立の可否が判断される見込みであり、テロ対策と自由の保障のバランスをどのように取るかが焦点となる。
