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豪ニューサウスウェールズ州、銃・反テロ関連法案を可決

これは12月14日に同州シドニーの観光地ボンダイビーチで発生した銃撃事件を受け、州政府が安全確保のため緊急招集した議会で成立したものだ。
2025年12月19日/オーストラリア、シドニーのボンダイビーチ(ロイター通信)

オーストラリア・ニューサウスウェールズ州(NSW)の州議会は24日、銃規制強化と抗議デモ規制を含む厳格な銃・反テロ関連法案を可決した。これは12月14日に同州シドニーの観光地ボンダイビーチで発生した銃撃事件を受け、州政府が安全確保のため緊急招集した議会で成立したものだ。

この銃撃事件ではユダヤ教の祭日「ハヌカ」の行事会場近くで父親と息子の2人組が発砲し、15人が死亡、数十人が負傷した。警察は事件をテロと断定、50歳のサジード・アクラム(Sajid Akram)は射殺され、息子のナビード・アクラム(Naveed Akram、24歳)被告は殺人やテロ関連罪などで起訴されている。警察は2人が過激派組織「イスラム国(ISIS)」などの影響を受けた可能性があるとみている。

成立した法案の中心は銃規制の強化と抗議活動の制限である。銃所有については、個人が保有できる銃を最大4丁に制限し、農業従事者や専門的な射撃競技者は例外的に最大10丁まで保有を認めることとした。

また、銃の種類についてもセミオートマチックなど特定の高性能銃は規制対象となる。銃ライセンスの更新頻度をこれまでより短縮し、認可取消しの際の手続きも縮小する規定が盛り込まれた。

さらに、法案は抗議デモ規制の新たな枠組みを設け、州警察に対し「テロ攻撃が宣言された場合」には最大3か月間の公共集会・デモの制限権限を付与する条項を導入した。この規定について政府側は「追加の暴力を防ぎ、コミュニティの安全を守るための必要な措置」と説明する一方、人権団体などは「表現の自由や集会の権利を不当に制限するもの」と批判し、権利侵害として憲法審査を求める動きを示している。

また、禁止された過激派組織に関連するシンボルの公衆展示の禁止も法案に含まれた。政府は「暴力や扇動を助長するシンボルの露出は社会の分断を深める」として、ISISなどの旗や標語の掲示を刑事罰や罰金の対象とすることを明記した。

この法案はNSW州議会の上下両院で可決、農村部代表の右派や銃規制に反対する政党が反対票を投じた。また、抗議制限については人権団体や複数の抗議グループが「民主主義を損なう」と強く非難している。抗議制限の停止を求める訴訟は来年初頭に最高裁判所で審理される見通しだ。

連邦政府のアルバニージー(Anthony Albanese)首相はこの法案を称賛し、ヘイトスピーチ規制強化や全国的な銃規制の強化など、更なる対策を検討する意向を示している。事件後の国民感情としては、強化された銃規制への支持が高まっているものの、表現の自由と安全確保の均衡に関する議論は今後も続く見込みだ。

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