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豪シドニー銃乱射事件、犠牲者の葬儀始まる、悲しみと怒りが渦巻く中

事件は14日午後、ユダヤ教の祭日「ハヌカ」のイベントが行われていたボンダイビーチで発生。50歳の男とその息子(24歳)の2人組が参加者に向けて発砲し、15人が死亡、数十人が負傷した。
2025年12月17日/オーストラリア、シドニー近郊のシナゴーグ、銃乱射事件で亡くなったラビの葬儀(AP通信)

オーストラリア・シドニーで12月14日に発生した反ユダヤ主義を動機とする銃乱射事件の犠牲者の葬儀が17日から始まり、悲しみと怒りが広がっている。

事件は14日午後、ユダヤ教の祭日「ハヌカ」のイベントが行われていたボンダイビーチで発生。50歳の男とその息子(24歳)の2人組が参加者に向けて発砲し、15人が死亡、数十人が負傷した。

警察は反ユダヤ主義に基づくテロと断定。男は現場で射殺され、息子は重傷から回復しつつあり、まもなく起訴される予定だ。最年少の犠牲者は10歳の少女であった。

シドニー近郊のシナゴーグ(ユダヤ教の聖堂)では17日、ラビ(ユダヤ教指導者)の葬儀が執り行われた。このラビはイベントの主催者であり、5人の子どもの父親でもあった。

葬儀には多くの参列者が集まり、会場外にも人があふれた。参列者は涙を流し、ユダヤ教の祈りがヘブライ語と英語で捧げられた。警察は会場周辺の警備を強化し、持ち物検査なども実施した。参列した政治家や市民らは、事件に対する連帯と、再発防止に向けた銃規制の強化を訴えた。今後、他の犠牲者の葬儀も順次行われる予定だ。

追悼の動きはシドニーだけにとどまらず、国内外で広がっている。多くの市民が献血や献花で支援を示している。

中央政府はこの事件を受け、銃規制を強化すると表明。アルバニージー(Anthony Albanese)首相は見直しを速やかに進めると強調した。

国連や海外の宗教指導者からも反ユダヤ主義に対する非難と追悼の声が上がっている。

事件後、オーストラリアでは反ユダヤ主義的な暴力や差別への懸念が強まっており、特にユダヤ教関連施設やイベントへの警戒が強化されている。今年に入ってからもシナゴーグへの放火未遂や暴力的な嫌がらせなどが多数報告されており、社会全体で憎悪犯罪対策の必要性が訴えられている。

政府はテロ警戒レベルを引き上げ、警察と地域社会が連携して安全確保に努めるとともに、憎悪犯罪の根絶に向けた取り組みを進めるとしている。

犠牲者の追悼と怒りは同時に、オーストラリア社会に対する深い問いかけとなっている。多くの参列者や市民は「平和に集う権利を守るべきだ」と語り、宗教や民族を問わない共生社会の実現を強く求めている。悲しみの中で、オーストラリアは反ユダヤ主義と銃暴力にどう向き合うかという課題に直面している。

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