豪・パプアニューギニア、安全保障協定締結へ、連携強化
オーストラリアとパプアニューギニアの関係は地理的な近接性、歴史的な植民地支配の経験、経済的結びつき、そして安全保障上の協力を背景に、複雑かつ緊密な性格を持っている。
とパプアニューギニアのマラペ首相(AP通信).jpg)
オーストラリアのアルバニージー(Anthony Albanese)首相は15日、今週署名するパプアニューギニアとの安全保障協定に基づき、両国の防衛部隊が統合されると発表した。
これはオーストラリアが同地域における中国の影響力を抑制する取り組みの一環である。
アルバニージー氏はオーストラリア放送協会(ABC)の取材に対し、「17日の式典でマラペ(James Marape)首相と共に協定に署名する」と語った。
米国務省の高官もこの式典に出席する予定だ。
アルバニージー氏はこの協定について、「これはパプアニューギニアとの防衛関係における非常に重要な格上げである」と語った。
またアルバニージー氏は「これは相互防衛を規定し、相互支援を提供し、資産とそれぞれの防衛部隊の相互運用性を統合することを意味する」と強調した。
オーストラリアとパプアニューギニアの関係は地理的な近接性、歴史的な植民地支配の経験、経済的結びつき、そして安全保障上の協力を背景に、複雑かつ緊密な性格を持っている。両国は南太平洋地域における最も重要な二国間関係の一つを形成しており、その協力は地域の安定や発展に大きな影響を与えている。
まず歴史的な側面を見れば、オーストラリアは第1次世界大戦後からパプアニューギニアの旧ドイツ領ニューギニアを委任統治領として管理し、第2次世界大戦後には国連の信託統治領として統治を続けた。これにより、パプアニューギニアは1975年に独立を果たすまで長期間にわたりオーストラリアの支配下に置かれていた。この歴史的経緯は、現在でも政治や社会、文化に影響を与えており、オーストラリアは独立後も最大の援助国としてパプアニューギニアの国家建設を支えてきた。
独立後のパプアニューギニアは経済基盤が脆弱で、教育や医療など社会インフラも十分に整備されていなかった。そのためオーストラリアは長年にわたり、開発援助や技術支援を通じてパプアニューギニアを支援してきた。現在でもオーストラリアはパプアニューギニアにとって最大の二国間援助国であり、インフラ建設、教育、保健医療、治安維持など幅広い分野で支援を行っている。特に、鉱業や天然ガスなどの資源開発に関連した投資はオーストラリア企業が大きな存在感を示しており、経済関係の中心を成している。
安全保障面でも両国は深い関係を持つ。パプアニューギニアの治安機関は能力不足や腐敗の問題を抱えており、国内の暴力や犯罪、さらに国境管理において課題が多い。このためオーストラリアは警察や軍の訓練、装備供与を通じて支援を行ってきた。特にソロモン諸島やブーゲンビル紛争など、地域の不安定要因に対して共同で対応した経験は両国の安全保障協力を強める契機となった。さらに、気候変動や海洋安全保障も両国の共通課題であり、密接な協議が行われている。
一方で、両国関係は必ずしも一方的な援助だけではなく、政治的緊張や摩擦を伴ってきた。パプアニューギニア側からは、オーストラリアが過度に影響力を行使し、内政干渉にあたると批判されることも少なくない。例えば難民問題をめぐっては、オーストラリアが自国に到着する亡命希望者をパプアニューギニアのマヌス島に収容する「オフショア処理」政策を実施したことが大きな議論を呼んだ。この政策はパプアニューギニアの主権や人権問題に関して批判が高まり、両国関係の緊張を招いた。
経済面ではパプアニューギニアが資源依存の経済構造から脱却できず、オーストラリアへの依存が強すぎるとの指摘もある。パプアニューギニア政府は中国など他国との関係強化を図り、援助や投資先を多様化しようとしている。これはオーストラリアにとっては、地域での影響力低下につながる可能性があり、両国の関係は戦略的に新たな局面を迎えている。
近年では、両国関係をより対等で持続可能なものにしようとする動きも見られる。例えば2023年には「包括的戦略的・経済的パートナーシップ協定」が進展し、インフラ整備やエネルギー協力、教育交流など多方面での関与が拡大している。また、太平洋島嶼国全体における中国の存在感拡大を背景に、オーストラリアとパプアニューギニアの協力は地域の安全保障戦略上ますます重要性を帯びている。
オーストラリアとパプアニューギニアの関係は植民地支配の歴史に根差しながらも、現在では援助・経済・安全保障・地域戦略といった多様な側面を持つものとなっている。パプアニューギニアにとってオーストラリアは依然として最大のパートナーである一方、主権尊重や対等性の確保が課題であり、オーストラリアにとってもパプアニューギニアとの関係をどのように維持・発展させるかは、インド太平洋戦略や中国の影響力拡大に直結する重要課題となっている。両国は今後も相互依存と緊張の間で揺れ動きながら、地域全体の安定に向けて協力を模索していくと考えられる。