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豪州証券投資委員会、年金基金業界にシステムへの投資促す

オーストラリアのスーパーアニュエーション制度は強制加入の退職年金制度として世界でも最大級の規模を誇り、資産運用の多様化や高い収益性が評価されている。
オーストラリア、ニューサウスウェールズ州シドニー(Getty Images/AFP通信)

オーストラリアの規制当局が国内の年金基金産業に対し、システム投資の強化を強く促している。同国の年金基金業界はスーパーアニュエーションと呼ばれ、運用資産は約4.5兆豪ドル(約493兆円)に上るが、2030年には8.5兆豪ドル規模に成長し、銀行部門を上回る存在になる見込みだとして、豪州証券投資委員会(ASIC)のシモーネ・コンスタント(Simone Constant)委員長が警鐘を鳴らした。

コンスタント氏は4日、シドニーで開かれた業界フォーラムで講演し、年金基金が今後ますます重要な役割を果たす中で、技術やシステムへの投資が遅れると脆弱性が生じるとの懸念を示した。特に運用システムやガバナンス体制、人材育成などでの投資不足が目立ち、退職者が増加し給付の引き下ろし需要が高まる将来に対応しきれなくなる可能性があると指摘した。

ASICはその具体例として、豪州証券取引所(ASX)のシステム障害やソフトウェア更新の失敗を挙げた。ASXは重要な市場インフラ運営者だが、過去に大規模なソフトウェア問題や取引処理の遅延といったトラブルを引き起こし、最終的にASICは2025年12月に追加資本要件として1.5億豪ドルの負担を課した。コンスタント氏はASXの事例を「投資と期待される役割が一致しない場合に起こり得る失敗の教訓」と述べている。

この警告は単に技術投資を促すだけでなく、業界全体の未来への備えを促すものでもある。年金基金が多くの加入者にとって生活の基盤となる資産運用を担っていることから、堅牢なシステム整備が不可欠だという見方だ。ASICは年金基金に対し、最先端の技術導入やベストプラクティスの採用を積極的に進めるよう求めている。

オーストラリアのスーパーアニュエーション制度は強制加入の退職年金制度として世界でも最大級の規模を誇り、資産運用の多様化や高い収益性が評価されている。一方でシステムやガバナンス面での課題も指摘されており、今回のASICの警告は業界にとって早急な対応が必要であるとのメッセージと受け取られている。

業界関係者の間では、急速な規模拡大に伴い、従来の運用システムや管理体制では大規模な給付処理や市場変動への対応が難しくなるとの懸念が広がっている。また、データ管理やサイバーセキュリティなど新たなリスクにも対応するための投資ニーズが高まっている。ASICはこれらの課題を踏まえて、業界が将来の負担に耐えうる体制を整えることが不可欠だと強調している。

ASICの呼びかけを受け、年金基金側でもシステム刷新や人材強化に向けた動きが今後一段と進む可能性がある。業界全体の信頼性向上や加入者保護の観点から、規制当局と基金運営側の協調が一層重要になるとの見方が強まっている。

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