SHARE:

オーストラリア議会下院、銃規制強化・ヘイトクライム法案を可決

この法案は特別会期として夏季休会を繰り上げて招集された議会で審議され、上院での審議・成立を目指すことになる。
2025年12月29日/オーストラリア、シドニー近郊、銃撃事件が発生した現場近く(AP通信)

オーストラリア連邦議会下院は20日、昨年12月にシドニーのボンダイビーチで発生した銃撃事件を受けて、銃規制強化とヘイトクライム対策を盛り込んだ2つの法案を可決した。この法案は特別会期として夏季休会を繰り上げて招集された議会で審議され、上院での審議・成立を目指すことになる。今回の措置は過去数十年で最悪となった射撃事件への政府の包括的な対応の一環とみられている。

銃規制法案は連邦政府が主導する全国的な銃買い戻し制度の創設や、銃器許可の審査強化を柱とする内容となっている。許可審査では各州が発行するライセンスに対して、保安情報機構(ASIO)などの情報を活用した背景調査を取り入れることが明記されており、違法またはリスクの高い所有を未然に防ぐ狙いがある。また、輸入規制の強化や高性能弾薬、拡張マガジンなどの装備への規制も検討されている。これらの措置はオーストラリアに流通する記録的な410万丁以上の民間所有銃を減らすことを目標にしている。

この銃規制法案は野党の支持を得られず、下院では96対45の賛成多数で可決された。政府側はこの銃撃について、「憎悪を胸に銃を手にした個人による行為」との認識を示し、こうした悲劇を防ぐための抜本的な対策が必要だと強調している。一方で野党側は、法案が合法的な銃所有者を不当に扱い、農家やスポーツ射撃愛好者への配慮に欠けると批判している。

もう1つの法案はヘイトクライム対策を強化するもので、宗教指導者や扇動者が暴力をあおった場合に最大12年の懲役を科す規定を盛り込むほか、ヘイトを広める者へのビザ(査証)発給や更新の拒否権限を政府に付与する内容となっている。また、過激主義を助長する団体を禁止する権限も与えられる見込みだ。下院では116対7の大差で可決され、リベラル党の賛成も一部得られたものの、野党の一部や緑の党からは言論の自由への影響を懸念する声が上がっている。

この両法案はもともと1つの包括的パッケージとして提出される予定であったが、野党からの反発を受けて2つに分割された経緯がある。分割に伴い人種的中傷に対する具体的な罪を新設する条項は見送られたが、政府は差別や暴力を助長する言動への対処強化を優先する姿勢を崩していない。

ボンダイビーチでの銃撃事件はユダヤ教の祭り「ハヌカ」のイベント中に発生し、15人が死亡、数十人が負傷した。この事件を受けてオーストラリア社会では反ユダヤ・反イスラム主義や憎悪犯罪への危機感が強まり、政府は対策強化を求める声に応じてきた。今回の法整備は、銃による暴力と憎悪に基づく犯罪を抑止するための大規模な立法措置として全国的な注目を集めている。

上院での審議を経て最終的に成立すれば、ボンダイ事件を契機としたオーストラリアの治安政策の大転換となる可能性がある。政府は国民の安全確保と自由の保障のバランスを図りつつ、厳格な法執行の枠組みを確立する意向だ。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします