◎当局者によると、政府は今後10年の間に予定している防衛および防衛産業に対する投資の一環として、誘導ミサイル製造に10億豪ドル(約840億円)を費やす予定だという。
3月31日、オーストラリアは防衛能力のさらなる強化を目指し、アメリカと緊密に協力して独自の誘導ミサイルの製造を開始すると発表した。
スコット・モリソン首相は記者会見の中で地球環境の変化を強調し、「軍事企業と提携して何千もの新たな雇用と輸出の機会を生み出すミサイルを製造する」と述べた。
当局者によると、政府は今後10年の間に予定している防衛および防衛産業に対する投資の一環として、誘導ミサイル製造に10億豪ドル(約840億円)を費やす予定だという。
モリソン首相は、「市民の安全に保つためには、オーストラリアの土壌に私たちが製造した防衛設備を設置することが必要不可欠です」と述べた。
オーストラリアが最後にミサイルを製造したのは数十年前で、現在はアメリカを含む同盟国からの輸入に依存している。地元メディアによると、政府は現在、打ち込まれたミサイルを着弾前に破壊する別の誘導ミサイルを製造しているという。
AP通信の取材に応じたシンクタンクのオーストラリア戦略政策研究所の防衛、戦略、国家安全保障を担当するマイケル・シューブリッジ氏は、モリソン首相の発表を歓迎し、「新型ミサイルの製造は防衛戦略と実際の防衛体制のギャップを埋める」と述べた。「インド太平洋の緊張は高まっており、自国の防衛能力強化は必要不可欠です。政府は中国とコロナウイルスによって高まった危機に対処しようとしています」
シューブリッジ氏は、中国の脅威の高まりだけでなく、コロナウイルスの影響で世界のサプライチェーンが深刻な影響を受け脆弱になっていることも政府の懸念事項のひとつになっていると述べた。「政府は軍艦または航空機から発射される可能性のある長射程対艦ミサイルに対処しなければなりません。また、新しい戦闘車両にもミサイルに対処できる能力が必要です」
「アメリカと協力して新世代の超音速ミサイルを製造することは理にかなっています。ロッキード・マーティンやレイセオンなどの大手軍事企業が商業パートナーに選ばれると思いますが、他のメーカーも特定のシステムの開発に関与している可能性があります」
オーストラリアはアメリカ、カナダ、イギリス、ニュージーランドと「UKUSA協定(通称ファイブアイズ)」を結び、世界中に5カ国の諜報機関のシギントシステムを張り巡らせ、集まった情報を共有している。
ピーター・ダットン国防相は記者団に対し、「政府はアメリカと緊密に協力して、オーストラリア、軍事企業、同盟国のニーズに対処できる最善の道を進みます」と述べた。「オーストラリアで兵器を製造すれば、自国の防衛能力の強化だけでなく、同盟国に兵器を供給できるようになります。世界のサプライチェーンに混乱が生じた時、私たちは同盟国が必要としている兵器を供給します」
オーストラリア戦略政策研究所はモリソン首相の記者会見の前に、「政府はミサイルと誘導兵器の購入に今後20年間で1,000億豪ドル(約8.4兆円)を計上する必要がある」と報告の中で見積もっていた。
シューブリッジ氏はAP通信の取材に対し、「今回のミサイル開発は、現在進行中の新型フリゲート艦とアタック級潜水艦の建造を待っている間の軍事的抑止力の強化に役立つだろう」と述べた。「紛争が発生した場合、オーストラリアは多くのミサイルを必要とします。しかし、速やかにミサイルを輸入することは簡単ではないでしょう」
「今、そのようなシナリオは十分に起こり得ると考えるべきです。中国が台湾を強制的に支配すれば、紛争は避けられません」
米カマラ・ハリス副大統領とモリソン首相は今月初めのオンライン会談で、中国、ミャンマー、インド太平洋の安全保障、気候変動などについて話し合い、両国の関係を強力に促進すると約束していた。