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オーストラリアとEU、自由貿易協定の締結急ぐ


この協定は2018年に交渉が開始されたが、EU側の農業保護政策と、オーストラリア産牛肉や羊肉の輸入枠を巡る対立などから、2023年に交渉が事実上決裂していた。
欧州委員会のフォンデアライエン委員長(左)とオーストラリアのアルバニージー首相(Getty Images)

EUとオーストラリアが長年にわたり停滞してきた自由貿易協定(FTA)の最終合意に向けて詰めの協議を進めている。EUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長がオーストラリアを訪問し、アルバニージー(Anthony Albanese)首相との首脳会談を通じて合意を目指す動きが加速している。

この協定は2018年に交渉が開始されたが、EU側の農業保護政策と、オーストラリア産牛肉や羊肉の輸入枠を巡る対立などから、2023年に交渉が事実上決裂していた。その後、双方が譲歩の姿勢を示したことで交渉は再開され、現在は「最終段階」に入っているとされる。

今回の合意を後押ししている背景には、国際的な貿易環境の変化がある。中東情勢の緊張や米国の通商政策、中国による重要鉱物の輸出規制などを受け、EUは貿易相手の多角化を急いでいる。一方のオーストラリアも資源輸出先の拡大や経済安全保障の観点から、欧州市場との結び付きを強める狙いがある。

協定が成立すれば、関税の大幅な削減や撤廃が見込まれる。特にEU側は自動車や機械、ワインなどの輸出拡大を期待しており、現在オーストラリアで課されている約5%の輸入関税の撤廃が焦点となる。また、EU企業にとっては年間で最大10億ユーロ規模の関税負担軽減につながる可能性がある。

一方、オーストラリア側は農産品の市場アクセス拡大を求めている。牛肉や羊肉、砂糖、コメなどの輸出枠をどこまで拡大できるかが主要な争点で、EUは自国農家への影響を考慮し、数量制限付きの受け入れを検討している。報道によると、牛肉については年間約3万トン規模の枠が議論されている。

さらにEUは電池や再生可能エネルギーに不可欠なリチウムやアルミニウムといった重要鉱物へのアクセス確保にも強い関心を示している。資源国であるオーストラリアとの連携は、中国依存の低減という戦略的意味合いも持つ。

EUとオーストラリアの貿易規模は既に大きく、2025年の物品貿易額は約472億ユーロ、サービス貿易も380億ユーロを超える。EUは双方の貿易で黒字を確保し、協定によってさらに輸出拡大が見込まれている。

フォンデアライエン氏の訪問はこうした経済的利害に加え、地政学的な連携強化の意味も持つ。EUはインド太平洋地域との関係強化を進めており、オーストラリアはその重要なパートナーと位置付けられている。

長年の難航を経て最終局面を迎えた今回の交渉は、自由貿易の推進と保護主義のせめぎ合いの中での重要な試金石といえる。合意に至れば、双方の経済関係を大きく前進させるとともに、変動する国際経済秩序の中で新たな協力の枠組みを示すことになる。

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