アジア各国が石炭火力の稼働強化、中東危機でLNG急騰
各国の電力各社はコスト抑制と安定供給を優先し、石炭火力の稼働を拡大している。
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中東情勢の緊迫化により液化天然ガス(LNG)の供給が大幅に制約される中、アジア各国で石炭火力への回帰が進んでいる。エネルギー安全保障を優先する動きが強まり、脱炭素政策との矛盾が浮き彫りになった形だ。
背景には、イランを巡る軍事衝突に伴うホルムズ海峡の混乱がある。同海峡は世界の石油・ガス輸送の要衝であり、ここを通過するLNGの流れが滞ったことで、アジア市場への供給が急減した。とりわけ主要輸出国カタールからの出荷停止が影響し、スポット価格が急騰、数年ぶりの高値に達した。
こうした供給不安を受け、各国の電力各社はコスト抑制と安定供給を優先し、石炭火力の稼働を拡大している。南アジアではバングラデシュやパキスタンが石炭発電の稼働比率を引き上げ、輸入燃料への依存を相対的に下げる動きを見せている。東南アジアでもフィリピンやベトナム、タイが同様に石炭利用を増やし、LNG火力の稼働を抑制する傾向が強まっている。
東アジアでも対応が進む。韓国では政府が石炭火力の発電制限を緩和し、原子力発電の稼働率引き上げと併せて電力不足に備える方針を示した。日本もLNG依存の高さから影響を受けており、代替燃料の確保や電源構成の見直しを迫られている。
今回の動きはLNG市場の構造的な不安定さも浮き彫りにした。アジアはエネルギー輸入依存度が高く、特にホルムズ海峡経由の供給に大きく依存している。このため地政学リスクが顕在化すると、価格高騰と供給不足が同時に発生しやすい。実際、今回の危機ではLNG価格が急騰し、電力コストの上昇が各国経済に打撃を与えている。
さらに、こうした価格高騰は将来のLNG投資にも影響を及ぼす可能性がある。南アジアを中心に計画されているLNG輸入プロジェクトの採算性が悪化し、総額1000億ドル規模の投資計画が不透明になりつつあると指摘されている。
一方で、石炭回帰は気候変動対策との衝突を招く。多くのアジア諸国は温室効果ガスの削減目標を掲げ、再生可能エネルギーやガス火力への移行を進めてきた。しかし短期的な供給不安の前で、より安価で入手しやすい石炭への依存が再び強まっている。
専門家の間では、今回の危機がエネルギー政策の転換点になる可能性も指摘されている。輸入燃料への過度な依存のリスクが再認識される中、再生可能エネルギーや国内資源の開発を加速させる契機になるとの見方もある。一方で、短期的には石炭利用の拡大が続く可能性が高く、脱炭素とエネルギー安全保障のバランスが今後の大きな課題となる。
