AIブーム、2026年のチップ製造機器の売上9%増、20兆円規模に
AIによる半導体需要の拡大が、製造装置市場全体を押し上げる主要因となる見込みだ。
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人工知能(AI)向けチップへの旺盛な需要を背景に、世界の半導体製造装置(ウェーハ製造装置)の売上高が2026年に約9%増加し、1260億ドル(約19.5兆円)に達する見通しが示された。市場調査・業界団体のSEMIが12月16日に公表した予測によると、この増加傾向は2027年も続き、同市場は1350億ドル規模に成長するとされている。
AIによる半導体需要の拡大が、製造装置市場全体を押し上げる主要因となる見込みだ。
SEMIの報告では、AI用途向けのロジックチップやメモリチップの製造能力拡大を進める半導体メーカーの設備投資が、装置需要を押し上げる中心となる。これらのチップは大規模データセンターや高性能コンピューティングシステムで不可欠な部品であり、AIモデルの学習や推論に必要な演算能力を支える基盤として重要視されている。
地域別では、アジアが引き続き世界の半導体装置市場を牽引すると予測されている。特に中国が装置投資総額で最大規模となる見込みで、台湾や韓国も主要な投資国として位置付けられている。
台湾には世界最大級のファウンドリ企業TSMCが存在し、高度なロジックチップの量産能力拡充を進めている。また韓国はAI用途の先進的メモリチップに注力し、装置需要を押し上げるとみられている。
SEMIはまた、欧米や中南米などその他の地域でも連邦・地方政府による補助金、政策支援、地域投資が進んでおり、装置支出は全世界的に増加するとの見方を示している。これにはサプライチェーンの多様化を図る動きや、特定地域での先端製造能力の強化を狙う各国の戦略的取り組みも含まれている
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半導体製造装置市場での主要企業はオランダのASMLが売上高の約4分の1を占める最大手として存在感を示す。米国勢からはアプライド・マテリアルズやKLA、ラムリサーチが上位に位置し、日本からは東京エレクトロンが競争力を持つメーカーとして挙げられている。これら企業はAI関連チップの製造に必要な最先端装置を供給し、市場成長の中心的役割を果たしている。
今回の予測はAI技術の進展とそれに伴うデータセンター需要の増大が世界的な半導体需要を押し上げている状況を反映している。AIによる計算需要の高度化は、単に最先端のロジックチップだけでなく、高速メモリや専用プロセッサへの投資増加をもたらし、製造装置市場全体を活性化させている。専門家は、このトレンドが今後数年にわたり続く可能性が高いと指摘している。
ただし、こうした成長見通しにはリスクも伴う。世界のサプライチェーンの地政学的な緊張や、各国の貿易規制が装置供給や投資の進展に影響を与える可能性がある。また、AIチップの設計・製造競争が激化する中で、装置メーカー各社も技術革新とコスト競争への対応を迫られている。
総じて、AIブームは半導体製造装置市場を押し上げる強力な成長ドライバーとなっており、2026年以降も関連投資の拡大が予想される。半導体産業全体の構造変化が、次世代のテクノロジーと製造力の競争をさらに加速させる可能性がある。
