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ボリビア全土で燃料補助金廃止に抗議するデモ、労組が主催

抗議デモはボリビア中央労働組合の呼びかけで実施され、ストは同組合に所属する鉱山労働者やコカ栽培者の団体などが中心となって行われた。
2025年12月22日/ボリビア、首都ラパス、政府の燃料補助金廃止に抗議するデモ(AP通信)

ボリビアで22日、長年維持されてきた燃料補助金の廃止に反対する大規模なデモとストライキが行われた。首都ラパスの中心部では鉱山労働者らが行進し、国内各地でも労働組合が組織したデモが展開された。今回の抗議はパス(Rodrigo Paz)大統領が燃料補助金制度を撤廃したことに対する労働者側の強い反発に端を発している。

抗議デモはボリビア中央労働組合の呼びかけで実施され、ストは同組合に所属する鉱山労働者やコカ栽培者の団体などが中心となって行われた。ただし、全ての労組が参加したわけではなく、主要な労組は政府との交渉の結果参加を見送るなど、意思統一が完全ではない状況が浮き彫りになった。

パス氏は11月8日に就任して以来、左派政権が20年以上維持してきた燃料補助金を廃止する決定を下した。これまでガソリンはリットル当たり約0.53ドルで販売されていたが、緊急政令により約1ドルまで値上がりした。政府は補助金廃止の理由について、毎日1000万ドルもの財政負担が発生し、その多くが密輸業者によって濫用されていると説明している。

政府の経済政策はビジネス団体や一部の経済学者から支持を受けている。補助金廃止は外貨準備の改善やドル不足の緩和につながるとの見方が強く、企業が資本や商品の輸入を容易にする効果も期待されるとしている。またパス政権は燃料補助金廃止の緩衝策として最低賃金を20%引き上げるなど労働者向けの支援も打ち出している。

しかしながら、抗議に参加した労働者や組合指導者は政府の決定を強く非難している。鉱山労働者の指導者は「我々は補助金廃止の政令が撤回されるまで闘い続ける」と述べ、政府が企業の利益を優先し、貧しい人々を犠牲にしていると主張している。ラパスの警察は政府庁舎前の中央広場へのデモ隊の進入を阻止するなど、治安対策を強化した。地方都市ではデモ隊が一部道路を封鎖し、国内9地域のうち6地域で高速道路封鎖が報告されるなど、抗議運動は全国的な広がりを見せた。

一方で、交通運輸労組は政府との交渉により自動車部品の免税輸入などの譲歩を得たことからストに参加せず、公共交通の運行が維持されている地域もある。このため、ストの参加率には地域差が見られ、専門家は労組の影響力の低下や、燃料補助金の廃止が一定の理解を得ている側面を指摘している。

燃料補助金の廃止は政府の財政再建策の一環と位置付けられているが、物価上昇や生活費の負担増が国民生活に直結するため、今後、社会的対立がさらに激化する可能性もある。ボリビアでは2026年に地方選挙が予定されており、今回の抗議運動が政治情勢に与える影響も注目される。

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