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ブラジル全土でジェンダー暴力に抗議するデモ、数万人参加

最大都市サンパウロやリオデジャネイロをはじめとする都市ではあらゆる年齢層の女性、そして一部の男性も参加し、フェミサイド(女性への殺害)、強姦、日常的な男性優位主義(マチズモ)をやめるよう訴えた。
2025年12月7日/ブラジル、リオデジャネイロ、ジェンダーに基づく暴力に反対する集会(AP通信)

ブラジルの各都市で7日、数万人の女性やその支持者たちが性別に基づく暴力(ジェンダー暴力)に抗議した。

最大都市サンパウロやリオデジャネイロをはじめとする都市ではあらゆる年齢層の女性、そして一部の男性も参加し、フェミサイド(女性への殺害)、強姦、日常的な男性優位主義(マチズモ)をやめるよう訴えた。

リオのデモ参加者たちは「machismo kills(マチズモは殺す)」と書かれたステッカーを貼り、黒い十字架を並べ、抗議の意思を示した者もいた。

抗議を促したのは最近相次いだ衝撃的な事件だ。リオの学校で管理職を務めていた女性が同僚男性に殺害された事件。サンパウロでは元交際相手が女性を車でひき、1キロにわたって引きずるという残虐な事件が発生した。

さらに南部フロリアノポリスでは英語教師の女性がビーチ近くの小道でレイプされたうえ絞殺されるという痛ましい事件も起きている。

サンパウロの集会に参加した女性はAP通信の取材に対し、「これ以上我慢できない。今日は私たちの声をあげるためにここにいる」と語った。

背景には暴力の統計的な増加もある。独立系の治安分析機関FBSP(ブラジル公安フォーラム)の2025年の報告では、過去1年間で女性の3人に1人以上が性やジェンダーに基づく暴力を経験したとされており、統計開始以来最多となった。

また、2024年には同国内で1,492件のフェミサイドが報告されており、2015年にフェミサイドを犯罪として定める法が成立して以来、過去最悪の人数となった。暴力の“量”だけでなく、“凶悪性”“残虐性”も増しているという。

抗議に参加したある女性はAPに、10年前にフェミサイド未遂の被害にあったことを明かし、「生き延びたけれど、ほかの女性のためにも声をあげなければ」と語った。また、ある男性参加者は「男性も日々の生活で女性蔑視や性差別を許さないよう行動すべきだ」と訴えた。

こうした抗議の拡大はブラジル社会に根強い性差別や男性優位構造、そしてそれを背景とした暴力の根絶を強く求める民意の現れといえる。また、参加者たちは単なる悲しみや怒りの表明にとどまらず、法改正や制度的な防止策の強化を要求し、社会全体の意識変革を促している。

今回のデモはブラジル国内で性暴力・ジェンダー暴力が構造的な問題であることを改めて浮き彫りにした。同時に、多くの市民、特に女性たち自身が声をあげ、抗議を組織することで、やむにやまれぬ危機感と変革への強い意思が社会に広がっていると捉えるべきである。

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