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なぜ米国はベネズエラの石油を狙っているのか

ベネズエラは世界最大級の原油埋蔵量を有するとされ、推計では約3000億バレル、世界の約17%を占めるとみられているが、老朽化したインフラや政治混乱のため現在の生産量は世界市場の約1%にとどまっている。
南米ベネズエラの油田(ロイター通信)

米国がベネズエラの石油資源に強い関心を示している背景には、同国が保有する膨大な原油埋蔵量と、それをめぐる政治・経済的な戦略がある。ベネズエラは世界最大級の原油埋蔵量を有するとされ、推計では約3000億バレル、世界の約17%を占めるとみられているが、老朽化したインフラや政治混乱のため現在の生産量は世界市場の約1%にとどまっている。

この状況を受けて、米国はマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領排除後、同国の石油資源活用を公然と打ち出している。トランプ(Donald Trump)大統領は、米国がベネズエラを実質的に運営し、同国の原油を利用する方針を示し、ベネズエラが過去に米国企業の資産を国有化したことを改めて非難した。

トランプ政権の戦略の一環として、ベネズエラから米国への原油供給が打ち出され、同国の一時的な石油販売として3000万〜5000万バレルが米国向けに割り当てられる案が浮上している。この石油は市場価格で売却され、収益は米国側が管理するとしている。これにより得られた収益は、米国およびベネズエラの一般市民に還元される計画だと米エネルギー省は説明している。

こうした動きは短期的には米国のエネルギー供給や価格面での利点をもたらす可能性がある。重く硫黄分の多いベネズエラ産原油は、米国のメキシコ湾岸にある製油所で処理され、ディーゼルやジェット燃料の供給増につながるとの見方もある。一部アナリストは、世界的な供給不足が懸念される中、この種の重質原油の安定供給はエネルギー市場に利する可能性があるとしている。

しかし、ベネズエラの石油産業の復活には多くの課題が伴う。長年の投資不足や腐敗、インフラの劣化により油田や精製設備は深刻な損傷を受けており、生産能力を引き上げるには巨額の資金と長期的な安定が必要だと専門家は指摘している。石油生産を現在の水準で維持するだけでも今後15年で約540億ドルの投資が必要とされ、増産を目指す場合はさらに多額の投資が必要になるとの試算もある。

また、過去にベネズエラは故チャベス(Hugo Chávez)前大統領の下でエクソンモービルなど米国企業の資産を国有化し、国際仲裁で賠償命令を受けたものの支払いは行われていない。このため米国企業が再進出する場合には、政治的・法的な安定性の保証が不可欠であり、将来的な再国有化リスクが投資意欲をそぐ可能性もある。

こうした複雑な状況を踏まえ、米国がベネズエラの石油を戦略的に活用する試みは、単なる資源獲得にとどまらず、エネルギー市場の供給確保や政治的影響力の拡大を狙った長期戦略の一部とみられている。しかし、実際に同国の石油産業を復活させ、米国の利益につなげるには依然として多くの障壁が存在している。

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