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ベネズエラ産原油の生産拡大が環境に悪影響を及ぼす理由

ベネズエラの原油は硫黄分が高く、軽質油と比較して処理が難しい「重質・高粘度」の原油である。
油田(Martin Meissner/AP通信)

ベネズエラの膨大な石油生産を再開・拡大する動きが、環境への重大な悪影響をもたらす可能性があるとの懸念が専門家から出ている。環境問題の専門家らは、同国の石油は「非常に重く、非常に粘りが強い」性質で、その抽出・精製には大量のエネルギーと資源を必要とするため、温室効果ガスの排出や汚染のリスクが高いと警告している。

米国がベネズエラ経済の立て直しの一環として同国の原油輸出を再活性化しようとしていることを背景に、この重質油の生産量を増やす計画が進行している。トランプ政権は3000万〜5000万バレル規模の原油を国際市場で販売する意向を示しているが、具体的な時期は示していない。収益は米国の口座で管理される予定で、ベネズエラ国民と米国双方の利益になるとされる一方で、環境への悪影響に対する懸念も強まっている。

ベネズエラの原油は硫黄分が高く、軽質油と比較して処理が難しい「重質・高粘度」の原油である。この種の原油は抽出や輸送、精製に通常より多くのエネルギーを要し、結果として二酸化炭素排出量が増加する可能性が高い。専門家の分析では、もし生産量が1日当たり100万バレルに増加すれば、原油生産過程からの二酸化炭素排出量は年3億6000万トンに達し、150万バレルまで増やせば5億5000万トンに上る可能性があるという。これは世界の主要国の年間排出量と同等規模の影響を持つ。

また、ベネズエラ国内では既に深刻な環境問題が発生している。環境監視団体によると、2016〜2021年の間に約200件の石油流出事故が発生し、多くは当局に報告されていなかったという。さらに、衛星データによると、この20年間で約260万ヘクタールの森林が失われ、油田周辺での環境劣化が進行している。

地理的条件も環境リスクを高めている。ベネズエラ東部には流れの遅い河川が多く、油流出事故が発生した場合、汚染が長期間残存しやすいと指摘されている。また、重質油を輸出可能にするための加工施設は大量の水や化学物質を使用するため、周辺の生態系に深刻な影響を及ぼす可能性があるという。

既に湖沼や沿岸地域では歴史的な汚染が残っており、特に西部のマラカイボ湖は100年を超える油田開発により世界で最も汚染の激しい生態系の一つとなっている。こうした現状に対し、環境専門家は「重質油の生産拡大は既存の環境負荷をさらに悪化させる」と警告している。

一方、米エネルギー省は、米国企業がベネズエラの石油産業を再建する際に「最高水準の環境基準」を適用すると述べ、投資が環境改善に寄与する可能性もあるとの見解を示している。しかし、短期的には生産拡大が環境保護より優先されるとの懸念も根強い。

こうした背景を受け、ベネズエラの油田開発の進展は環境政策と経済政策の双方にとって重要な課題となっており、国際社会の注目が集まっている。

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