◎首都カラカスを含む都市部ではマドゥロ氏に抗議するデモが続いている。
ベネズエラの独裁者であるマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領は7月31日、最高裁判所に対し、週末に行われた大統領選の監査を行うよう要請した。
マドゥロ氏の支配下に置かれる選挙管理委員会は28日に行われた大統領選の集計結果を公表せず、現職のマドゥロ氏が得票率51%で勝利したと発表。欧米と一部の中南米諸国から非難を浴びている。
米政府の厳しい経済制裁に悩まされているマドゥロ氏は記者団に対し、「我々は選挙の集計表を全て示す用意がある」と語った。
またマドゥロ氏は「私は司法、正義の前に身を投じる」と主張。「最高裁に召喚され、質問され、調査を受ける覚悟だ」と述べた。
しかし、全野党はこれを「戯言」と呼び、「選管がデータを公表すればよいだけだ」と断じた。
選管は投票締め切りからわずか数時間後にマドゥロ氏の勝利を宣言したが、得票率以外のデータは公表しておらじ、今後公表するかも不明だ。
最高裁はマドゥロ政権が任命した判事で構成されている。
投票を監視する米国の財団「カーター・センター」はマドゥロ氏の監査請求を批判。「ベネズエラの裁判所は透明性のある公正な調査を行わない」と断じた。
また同センターは30日夜、選管が現地に派遣した職員による選挙結果の確認を拒否したと明らかにした。
それによると、同センターは現地に17人の職員を派遣している。
全野党の指導者であるマチャド(María Corina Machado)元議員は全国の電子投票機が印刷した集計表の3分の2以上を確保したと報告している。
それによると、全野党の統一候補であるゴンザレス(Edmundo González)氏の投票数は620万票であるのに対し、マドゥロ氏は270万票にとどまっているという。
選管はゴンザレス氏の得票率を44%と報告していた。
首都カラカスを含む都市部ではマドゥロ氏に抗議するデモが続いている。現地メディアによると、その一部が暴徒化し、全国で少なくとも1000人が逮捕されたという。
一部の米メディアは政府当局者の話しとして、「バイデン政権はベネズエラが透明性のある結果を公表しなかった場合、新たな制裁を検討する可能性がある」と報じている。
ベネズエラの経済は米政府によるマドゥロ政権への厳しい経済制裁とマドゥロ氏のバラマキ政策で急速に悪化。GDPはマドゥロ氏が就任した2013年以降、右肩下がりとなり、2021年には10年前の2割以下に落ち込んだ。
現在のGDPはピーク時の4分の1となり、その結果、推定770万人が国外に流出。その多くが他の中南米諸国を経由して米国への移住を目指している。
米政府は昨年10月、マドゥロ政権が野党連合と選挙協定を結んだ見返りとして、経済制裁を一部緩和したものの、ベネズエラ初の女性大統領を目指しているマチャド氏が選挙に立候補できなかったことなどを受け、今年3月にこれを取り消した。