◎ベネズエラとイランは米国の厳しい制裁下に置かれている。
ベネズエラのマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領は11日、イランとの貿易関係を強化し、米国の制裁に立ち向かうと宣言した。
マドゥロ氏はイランのライシ(Ebrahim Raisi)大統領との共同記者会見で米国との対決姿勢を前面に押し出した。
イラン国営テレビによると、マドゥロ氏はイランとの関係を強化する協定に署名したという。またマドゥロ氏は、米国の制裁にひるむことなく国外に原油を輸出しているイランを称賛し、米国を非難した。
「イランの原油はベネズエラ国民を助けています。この協定で両国の関係はさらなる発展を遂げるでしょう」
米国は2018年にイラン核合意から撤退し、イランの外国資産を凍結したうえで、イランの原油、天然ガス、石油化学製品などに対する投資を禁止した。
米国の制裁下に置かれているマドゥロ氏は、イラン核合意の完全崩壊が近づいているという懸念が高まる中、初めてイランを訪問した。
両首脳は共同記者会見の中で、原油、石油化学産業、軍事、経済分野で関係を拡大する20年間の協定に署名したと発表した。
イラン国営テレビは当局者のコメントを引用し、「マドゥロ氏とライシ氏は米国の制裁に効率よく対処する方法などについて協議した」と報じている。
マドゥロ氏は、「ベネズエラとイランは共通のビジョンで結ばれており、米国とその同盟国による強制措置の犠牲者だ」と語った。「よって、私たちはいじめっ子に対処する経済戦略を策定し、これに立ち向かうのです...」
イランの最高指導者であるハメネイ(Ali Khamenei)師も両国の関係強化を称賛し、「米国の圧力に対抗する唯一の方法は抵抗である」と自身のウェブサイトに声明を投稿した。「私はマドゥロ氏とベネズエラ国民に感謝します...」
マドゥロ氏は今週ロサンゼルスで開催された米州サミットから除外された。
バイデン(Joe Biden)大統領は権威主義者の統治下に置かれているベネズエラ、キューバ、ニカラグアをサミットから除外し、これに反発したメキシコ大統領がボイコットを表明した。
ライシ氏はマドゥロ氏を称賛し、「帝国主義に対抗する方針を示し、制裁や脅迫に屈しない指導者」と評価した。
また両首脳は、イランの首都テヘランとベネズエラの首都カラカスを結ぶ直行便を来月就航させると発表した。
イラン国営テレビによると、イランはベネズエラに石油タンカーを1隻送ったという。
イラン核合意の先行きは不透明と言わざるを得ない。
国際原子力機関(IAEA)は今週、イランが国内の核施設に設置されていた監視カメラ27台の撤去を開始したと発表した。
またIAEAは、イランが3カ所の未申告施設で見つかった核物質について、信頼できる情報を提供しなかったと非難している。
イランの通貨はIAEAの非難声明後、過去最低を更新する1ドル=32万7500リヤルまで下落した。