◎ベネズエラとブラジルの関係は7月末の大統領選以来、急速に悪化。ルラ氏はマドゥロ氏の勝利を認めず、選挙管理委員会が集計結果を公表しない限り、結果を受け入れないとしている。
南米ベネズエラの独裁者であるマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領がロシア中部カザンで開かれた新興5カ国(BRICS)首脳会議にサプライズ参加し、手ぶらで帰国した。
ベネズエラ外務省は声明で、「ブラジルが同国のBRICS加盟に拒否権を発動した」と主張した。
BRICSはブラジル、ロシア、インド、中国によって2006年に設立され、2010年に南アフリカが加盟。昨年イラン、エジプト、エチオピア、UAE(アラブ首長国連邦)の4カ国が加わり、サウジアラビア、パキスタン、アゼルバイジャン、マレーシア、トルコが正式に加盟を申請した。
サミットは22~24日の日程で行われ、首脳宣言を採択し閉幕。プーチン(Vladimir Putin)大統領は期間中、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席らと個別に会談した
ベネズエラ外務省はブラジルのルラ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領を「不道徳な男」と呼んだ。
ベネズエラとブラジルの関係は7月末の大統領選以来、急速に悪化。ルラ氏はマドゥロ氏の勝利を認めず、選挙管理委員会が集計結果を公表しない限り、結果を受け入れないとしている。
マドゥロ氏の支配下に置かれる選管は7月28日に行われた大統領選の集計結果を公表せず、マドゥロ氏が得票率51%で勝利したと宣言した。
しかし、野党陣営は全国の電子投票機が印刷した集計表の80%以上を確保したと報告。それによると、全野党の統一候補ゴンザレス(Edmundo González)氏の得票数はマドゥロ氏に2倍以上の差をつけていたという。
米国を含む数カ国が選挙の勝者をゴンザレス氏と認定。選管に透明性のある集計結果を公表するよう呼びかけてきた。
しかし、最高裁判所は8月末、マドゥロ氏の勝利を認定。さらに首都カラカスの地方裁判所は先月、ゴンザレス氏が選挙結果を捏造し、暴動を煽ったなどとして逮捕状を発行した。
この結果、ゴンザレス氏はスペインへの亡命を余儀なくされた。
ルラ氏は当初、マドゥロ氏を支持すると示唆したが、最終的に野党の主張を認め、米政府などと共に投票の内訳を公表するよう求めた。
米国はゴンザレス氏の勝利を認定しているものの、同氏を大統領として承認することは見送っている。
ベネズエラ外務省は声明で、「ブラジル政府は前政権が長年ベネズエラに対して適用してきた拒否権を維持することを決定し、西側から発信される憎悪、排除、不寛容に従った」と主張した。
また同省は「この不可解で非道徳的な嫌がらせに憤りを感じている」と述べた。
ベネズエラはBRICSへの加盟を強く働きかけている。マドゥロ氏はサミットにサプライズ登場し、自国は「BRICSファミリーの一員である」と高らかに宣言した。
プーチン氏はマドゥロ氏と会談した際、ベネズエラの立場に理解を示しながらも、BRICS加盟には現加盟9カ国の承認が必要であると強調した。
またプーチン氏は「ブラジルの立場も理解しているし、ベネズエラが生き残りをかけて戦っていることも知っている」と述べた。
プーチン氏は24日の記者会見でこの問題についてルラ氏と今週電話で議論したと明らかにした。
ルラ氏もサミットに出席する予定であったが、自宅で負傷したため、訪問をキャンセル。オンラインで参加した。
プーチン氏は「ブラジルとベネズエラの関係修復に協力する」と述べた。
ベネズエラの経済は米政府によるマドゥロ政権への厳しい経済制裁とマドゥロ氏の後先考えないバラマキ政策で急速に悪化。GDPはマドゥロ氏が就任した2013年以降、右肩下がりとなり、2021年には10年前の2割以下に落ち込んだ。
現在のGDPはピーク時の4分の1となり、その結果、800万人近くが国外に流出。その多くが他の中南米諸国を経由して米国への移住を目指している。