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ベネズエラのノーベル平和賞受賞者が変革誓う、米国との緊張高まる中

今回の一連の動きは米国とベネズエラの長年にわたる対立が新たな局面に入ったことを示しており、今後の展開が地域の安定とエネルギー市場に与える影響について国際社会の注目が集まっている。
2024年7月29日/ベネズエラ、首都カラカス、大統領選に立候補したゴンザレス候補(左)とマチャド元議員(AP通信)

米国とベネズエラの関係は12月中旬時点で、米国による石油タンカーの拿捕をきっかけに過去数年で最も深刻な緊張状態に陥っている。

米海軍は10日、制裁対象のベネズエラ産原油を積載したタンカーをベネズエラ沖で拿捕し、積荷を押収したと発表した。これは2019年に制裁が強化されて以降、米国がベネズエラの油船を公式に拿捕した初めての事例であり、米国側は制裁の履行と圧力強化の一環であると説明している。

米当局はこの船をテキサス州ヒューストンに移動させ、積載された原油を小型船に移し替える手続きを進めていると伝えられている。また米国は独裁者マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領の親族と関連船舶を対象とする新たな制裁も科し、今後さらにタンカーの拿捕を計画しているとの情報もある。米軍は南カリブ海域の兵力を増強しており、トランプ政権がマドゥロ政権の退陣を目指す圧力を一段と強めている状況だ。

ベネズエラ政府はタンカーの拿捕を「露骨な窃盗」「国際的な海賊行為」と強く非難し、国際機関に訴える意向を示している。また同政府は人権侵害などで国際刑事裁判所(ICC)による捜査が進む中、同裁判所からの脱退手続きを進めている。ベネズエラ側は米国の行動は主権侵害であり、経済的打撃を与えることを目的とするものだと主張している。

この緊張は地域全体にも影響を与えている。米国による拿捕後、ベネズエラからの原油輸出は大幅に落ち込んでおり、主要顧客国を含む取引が停滞しつつある。特に経済危機に直面するキューバでは燃料供給の不安が高まっており、電力システムへの影響が懸念されている。ベネズエラの原油は中国向けが中心だが、米国向けの輸出も一部存在しており、拿捕が中南米のエネルギー市場に波紋を広げている。

こうした中、ベネズエラの野党指導者マリア・コリナ・マチャド(María Corina Machado)氏は渡航禁止措置を破ってノルウェー・オスロへ渡り、ノーベル平和賞を受賞した。

マチャド氏は帰国後の政治変革と平和的な政権移行を誓い、トランプ政権の支援に感謝の意を示した。またマチャド氏はマドゥロ政権が交渉による移行を拒否した場合でも、政権交代を実現する意向を表明し、国際社会の支援を求めた。

米国内ではこの政策が合法かどうかを巡る議論も起きている。トランプ政権を支持する強硬派はマドゥロ政権を非難し続ける一方で、一部の民主党議員や専門家はタンカー拿捕や軍事的圧力が過度であり、透明性の確保や国際法との整合性が必要だと指摘している。

今回の一連の動きは米国とベネズエラの長年にわたる対立が新たな局面に入ったことを示しており、今後の展開が地域の安定とエネルギー市場に与える影響について国際社会の注目が集まっている。

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