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ベネズエラ国民議会、米軍の「麻薬密輸船」攻撃を調査へ

米海軍は9月、外国テロ組織に指定されているベネズエラの麻薬組織トレンデアラグアが運航する麻薬輸送船を空爆し、構成員11人を殺害。その後、さらに19隻の麻薬密輸船を爆撃した。
米海軍の原子力空母ジェラルド・R・フォード(Getty Images)

ベネズエラの国民議会(一院制、定数277)は11月30日、米軍がベネズエラ沖および東太平洋で行ったとされる「麻薬密輸船」への攻撃について調査するため、特別委員会を設置すると発表した。

国会議長は国営テレビの演説で、この調査は徹底的に行われ、国内の検察当局も関与する予定であると語った。

米メディアは今週、一連の攻撃のうち少なくとも1隻について、ヘグセス(Pete Hegseth)国防長官が「乗船者全員を殺害するよう命じた」とされ、さらに生存者に対する2回目の攻撃で生き残った者まで殺害されたと報じた。

これに対し、ベネズエラ側は事実関係の究明を求めており、犠牲者の身元、攻撃の正当性、そして米側の主張する「麻薬密輸」の根拠を含めた全面的な検証を目指すとしている。

米海軍は9月、外国テロ組織に指定されているベネズエラの麻薬組織トレンデアラグアが運航する麻薬輸送船を空爆し、構成員11人を殺害。その後、さらに19隻の麻薬密輸船を爆撃した。

一連の攻撃による死者は80人にのぼっている。

これらの攻撃は麻薬の流入を防ぐためだと説明されている。一方、ベネズエラ政府は対象となった船舶や乗員が犯罪に関与していたとの証拠が示されておらず、麻薬密輸容疑を否定。また、これら攻撃の背景には、ベネズエラの豊富な石油資源をめぐる米国の影響力拡大や政権転覆を意図した動きがあると主張している。

トランプ(Donald Trump)米大統領は前日、ベネズエラ上空および周辺の空域を「全面的に閉鎖されたものと見なす」と宣言。これに対しベネズエラ政権は「植民地主義的な主権侵害の脅しだ」と強く反発した。

こうした一連の動きは、単なる麻薬対策にとどまらず、ベネズエラの主権や国際法、地域の安全保障をめぐる大きな対立につながっている。

ベネズエラ国会が設置する特別委員会による調査は、関係者の証言の聴取、攻撃を裏付ける証拠の提出要求、遺族への聞き取りなどを含む予定だ。だが、これまでに米国は犠牲者の身元、証拠映像や麻薬積載の物証など、詳細情報をほとんど公開しておらず、真相解明には高いハードルがある。

国際的な人権団体や海上法専門家、あるいは国際法廷の関与を求める声も上がっているが、具体的な動きはまだ見えていない。

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