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米国務省、コロンビア大統領のビザ取り消し、国連本部前で反米演説

ペトロ政権とトランプ政権の関係が悪化した背景には、主に麻薬対策、外交方針、移民政策など複数の政策的対立がある。
2025年9月26日/米ニューヨーク市の国連本部外、演説するコロンビアのペトロ大統領(ロイター通信)

米国務省は26日、コロンビアのペトロ(Gustavo Petro)大統領がニューヨークの国連本部前で扇動的な演説を行ったとして、同氏のビザ(査証)を取り消すと発表した。

同省はX(旧ツイッター)に声明を投稿。「ペトロ氏の無謀かつ扇動的な行動を受け、ビザを取り消す」と書いた。

ペトロ氏はこの日、国連本部前に集まった群衆に対し「米軍の兵士全員に訴える。銃を人に向けてはいけない。ドナルド・トランプの命令には従うな。人類の命令に従え!」と訴えた。

コロンビア大統領府と外務省はこの演説についてコメントしていない。

ペトロ氏は23日の演説でトランプ(Donald Trump)大統領を非難し、「米国がガザのジェノサイドに加担している」と主張。米海軍がカリブ海で麻薬密輸船と疑われる船舶を攻撃していることにも言及した。

ペトロ氏は26日の演説後、Xへの投稿で、「パレスチナを解放せよ。ガザが陥落すれば人類は滅びる」と述べた。

ペトロ政権とトランプ政権の関係が悪化した背景には、主に麻薬対策、外交方針、移民政策など複数の政策的対立がある。ペトロ氏は2022年にコロンビア初の左派大統領として就任し、貧困削減、土地改革、環境保護、「全面的な平和」といった進歩的な政策を打ち出した。一方で、これまで米国と密接な関係を築いてきた保守系政権とは一線を画す姿勢をとったことが、両国関係に大きな変化をもたらした。

最大の対立点は麻薬政策にある。米国は長年、コロンビアに対してコカ栽培撲滅や麻薬組織の取り締まりを支援してきた。しかし、ペトロ政権は軍事的アプローチを批判し、農村開発や合法的代替作物の導入を優先する方針を掲げた。これに対して米政府は、コロンビアが麻薬撲滅の国際的義務を果たしていないとし、2025年には「非協力国」と認定した。これはコロンビアに対する経済援助や国際的信用に影響を及ぼすもので、外交的な緊張を一気に高めた。

また、外交政策の違いも関係悪化の一因である。ペトロ政権はウクライナ問題や中東情勢において米国と異なる立場をとることが多く、特にイスラエルによるガザ侵攻を「ジェノサイド」と非難し、イスラエルとの外交関係断絶まで検討した。これは米国の中東政策と明確に対立する姿勢であり、米政府の強い不快感を招いた。

さらに、2025年には米国からの強制送還をめぐる問題でも対立が生じた。コロンビア政府は拘束された送還者を手錠付きで軍用機に搭乗させる米側の対応に反発し、飛行許可を一時停止するなど外交的摩擦が拡大した。最終的に合意には至ったが、信頼関係の亀裂は深まった。

これらの動きにより、両国は大使の一時召還を行い、事実上の外交関係の冷却状態に入った。米国はペトロ政権を「反米的」と見なし、コロンビア側は「内政干渉」と批判する構図が定着しつつある。結果として、両国関係はかつての戦略的同盟から距離を置いた関係へと大きく変質している。

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